主張の強い人が、断ることが苦手な人を使い倒しているような風潮もある世の中。良好な人間関係づくりには、断る勇気も必要です。

 実は私も「断る力」の弱さから、「やりがい」と「心身の負担」の間で苦しんだことがあります。今回は、どんな人間関係もさらっと気持ちのいい距離に保つ「断り方」のコツをお伝えします。

 ある企業の名物宣伝部長が、食事の席でこんな話をしてくれました。

 「企業でも人間でも、一番大切なことは『気持ちのいい距離感』を保つこと。仲が良すぎて断りたいときに断れない、相手との距離が遠過ぎて、声をかけたいときに見つからない、それではダメだ。

 『断る勇気』といつも近くにいる『存在感』とを併せ持つ。そういう社会人を目指しなさい」

 まだ20代でしたが、「気持ちのいい距離感」という言葉は胸に沁(し)みました。

 当時の私は、この力がものの見事に欠けていました。あの頃の広告クリエイティブの世界は徒弟制度。「できません」と言えば、その後どんなに恐ろしいことが待っているか、想像もできません。

 無理をするから仕事が荒れる。そのせいで余計にプレッシャーを感じてしまう。仕事ばかりか、「つきあいが悪い」と言われるのが怖くて、食事の誘いも断れない。悪循環が続いて、重い病気にかかりました。そのとき初めて真剣に、「断る勇気」の必要性を感じたのです。

人間関係の距離を保つためには、「ここから先は入れさせない」「ここまでしかしゃべらない」と相手に合わせて一線を引くこと。「断り方」にはコツがあります
人間関係の距離を保つためには、「ここから先は入れさせない」「ここまでしかしゃべらない」と相手に合わせて一線を引くこと。「断り方」にはコツがあります
手法1 自ら進んで○○を言わない/手法2 ○○から始める/手法3 ○○→後で断る/手法4 ○○力(「○○んなよ」)を持つ