令和時代へと幕を開けた5月は、梅雨入り前とは思えない猛暑を記録しました。そして6月、暑かったり雨が降ったりしても気兼ねなく過ごせる場所といえばミュージアム。併設されたカフェならば、作品の鑑賞と一石二鳥。おいしさだけでなく、知識欲も満たされます。自分自身と向き合う時間をつくりたい人にはぴったりの空間ではないでしょうか。

 「森ビルデジタルアートミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」(東京都江東区)が話題です。来場者数が100万人を突破(2018年11月28日時点)した後も増え続けているこのデジタルアートミュージアム。来場者には外国人が多く、ここが日本であるということを忘れてしまいそう。

 オープンしたのは約1年前。1万平米という空間に、470台ものプロジェクターを設置。そこから映し出される光のアートは、空間と空間の境目を見失うほど深く、広く、ときに幻想的、ときに鮮やかに描かれ、目で見る現実の世界だけでなく心の世界まで広がりを持たせてくれそうな印象です。

 さっそく入ってみましょう。

 足元がおぼつかないほどの暗さの中、一歩一歩、歩を進めるにつれ、さまざまなアート作品が現れます。体はその光に包まれ、無限に感じる空間の中で、心の枠が外れていくようです。

 「ボーダレスワールド」「運動の森」「学ぶ! 未来の遊園地」など5つの空間それぞれにコンセプトがあり、驚くのは、一瞬として同じアートの姿はなく、常に移ろいます。まるで生きているようです。

 それを楽しんでいると、アッという間に2~3時間たってしまいそう。平均滞在時間は3~4時間というから驚きです。そこで重宝するのがこの敷地内にある「EN TEA HOUSE幻花亭」です。多くの人がいったんこのティーハウスで一休みしてから、またアート空間に戻り、鑑賞するそうです。

EN TEA HOUSE幻花亭。ここの空間すべてが、インスタ映えすること間違いなし。奥の壁に浮かび上がる一筆書きの作品「円相 - Gold Light」は、文字が生きているかのよう。チームラボは設立以来、こうした空間に描く「書」に取り組んでいる
EN TEA HOUSE幻花亭。ここの空間すべてが、インスタ映えすること間違いなし。奥の壁に浮かび上がる一筆書きの作品「円相 - Gold Light」は、文字が生きているかのよう。チームラボは設立以来、こうした空間に描く「書」に取り組んでいる

 テンションの上がった心と頭を「水出し茶」「ゆず緑茶」(いずれもワンコイン。税込500円)といった冷たい緑茶で冷やしてすっきりさせるもよし。人気の「カモミールほうじ茶ラテ」(同)でほっこりさせるもよし。温かい「カモミールほうじ茶ラテ」は、カモミールが優しくほのかに香り、ミルクの甘味とぴったり。外国人受けもよさそう!

 空間全体が暗く、静かです。写真撮影は可能ですが、フラッシュは禁止。幻想的な音楽が静かにずっと流れているだけです。

 定番人気メニューは「凍結玉緑茶(玉緑茶のアイスクリーム)セット」。緑茶の渋みと風味を生かしたアイスクリームとドリンクのセットです。

「凍結玉緑茶(玉緑茶のアイスクリーム)セット」(1200円)。濃厚なアイスクリームの味とお茶が合います。ドリンクもアイスも、なくなり次第終了
「凍結玉緑茶(玉緑茶のアイスクリーム)セット」(1200円)。濃厚なアイスクリームの味とお茶が合います。ドリンクもアイスも、なくなり次第終了

 EN TEA HOUSE幻花亭の魅力は、視覚で楽しみ「アートを飲む」ような感覚を体験しながらいただけるという点。茶やアイスが入った器を持ち上げたり、動かしたりすることで、花が咲いたり散ったり、テーブルに映し出される茶の葉が成長したり枯れたりします。あたりの暗さが、空間への没入感を高めてくれます。

器の中に映し出される花は、季節に合わせて変わります。出現はランダムで、常に違う花が楽しめるとのこと
器の中に映し出される花は、季節に合わせて変わります。出現はランダムで、常に違う花が楽しめるとのこと
器を動かすと花がはらはらと散っていきます
器を動かすと花がはらはらと散っていきます

 映し出される花や葉は、育って咲き乱れては枯れ落ち、また芽吹きます。咲き続ける花を見ていると、その無限の可能性を感じられます。

 「こんなことができるなんて!」「どうしてこんな花が映し出されるのか」と、感動しながらいただく緑茶やアイスクリーム。楽しくて、おいしくて面白くて、その上、深い!

 筆者はテーブルの上に広がり、移りゆく花や葉を見ながら、いろんなことに考えが及び、頭の中が少しずつ整理され、洗われていく感覚がしました。ただ、美しいなぁ、キレイだなぁと感じられるということ。そして、それを単純に楽しめるということ。

 こういう時間を持つことの意義を改めて感じた、長いようで短かった、アッという間のカフェタイムでした。

「映え」写真を撮りたいなら、壁に垂直にアートが広がる壁際の席がおすすめ。まるで花びらが風に吹き上げられているよう。2人並んでセットをいただくと、テーブル上に茶の木が茂り、重なり合います。「知らない人同士が隣り合ってもボーダーレスでつながります」(チームラボ)
「映え」写真を撮りたいなら、壁に垂直にアートが広がる壁際の席がおすすめ。まるで花びらが風に吹き上げられているよう。2人並んでセットをいただくと、テーブル上に茶の木が茂り、重なり合います。「知らない人同士が隣り合ってもボーダーレスでつながります」(チームラボ)

 EN TEA HOUSE幻花亭に入るには、まずこのミュージアムへの入場券が必要です。そのうえで、ティーハウス入り口から中に入ります(行列が!)。

 迷路みたいな空間だからこそ、たどりつけたときは感動も大きいというもの。老若男女楽しめる場所です。ただ段差や暗闇があるので、高齢者を連れていく場合はゆっくり歩くなどの配慮が必要かもしれません。

 「今日は思考を広げる日」と決めて、一人で行くのもいいかもしれません。何かに行き詰まったとき、悩みを抱えたとき、心に余裕が必要と感じたときに行ってみては。

「人々のための岩に憑依する滝」という作品。さまざまな色の光が空間中を占める様子は圧巻
「人々のための岩に憑依する滝」という作品。さまざまな色の光が空間中を占める様子は圧巻