グッドデザイン賞受賞のアイテムを集めた唯一のショップ

 次は日本全国の良いデザインに触れられるショップへ行きましょう。

 「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA」は、グッドデザイン賞(日本デザイン振興会が主催する日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組み)を受賞した文具や雑貨、インテリアに食品などが約1000点もそろうショップ。

GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA。同じ高さにそろえられた陳列棚が目を引く。空間がゆったりと取ってあり、だれかの家に入るような感覚になる
GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA。同じ高さにそろえられた陳列棚が目を引く。空間がゆったりと取ってあり、だれかの家に入るような感覚になる

 ところは、東京・丸の内「KITTE」3階。ここに来れば、「良いデザイン」に囲まれた暮らしがイメージできそう。というのも、店内は「リビングルーム」や「ダイニングルーム」「ホビールーム」など日本の一般的な住居の間取りに沿った部屋に分かれており、ライフスタイルに合わせた商品を、テーマごとに選べるようになっているからです。陳列の仕方も、日常で使う際の高さ(ちゃぶ台や食器棚など)を意識しているので、通常の棚の位置より低かったり高かったりします。それがお店全体に生活感をもたらしているのかもしれません。

正面は「フロントガーデン」と呼ばれるエリアで、約1カ月ごとに期間限定の催事を行う
正面は「フロントガーデン」と呼ばれるエリアで、約1カ月ごとに期間限定の催事を行う

 こだわりの食器などキッチン周りのものやテーブルウエアを探すならダイニングルームに。キッズ向けのものや文具は、ホビールームに行けばよし。「部屋」を回遊していると、面白いデザインのものたちからインスピレーションが得られる気分に。

お店の右側から入った「リビングルーム」。正面の通路のような空間を抜けた奥が「ダイニングルーム」
お店の右側から入った「リビングルーム」。正面の通路のような空間を抜けた奥が「ダイニングルーム」
「ダイニングルーム」。キッチン用具やカトラリー、食器などがずらり。さりげなく置かれた椅子は受注生産対応で購入可能
「ダイニングルーム」。キッチン用具やカトラリー、食器などがずらり。さりげなく置かれた椅子は受注生産対応で購入可能
一番奥にある「ホビールーム」。子ども向けアイテムや男性向けガジェットもある。お客の滞在時間が一番長い場所だとか。デザイン性・機能性の高い文具に、筆者も「これ全部欲しい!」とテンションが上がりまくり
一番奥にある「ホビールーム」。子ども向けアイテムや男性向けガジェットもある。お客の滞在時間が一番長い場所だとか。デザイン性・機能性の高い文具に、筆者も「これ全部欲しい!」とテンションが上がりまくり

 ショップでありながら、ショールーム。ショールームなのに商品の購入ができる。というライフスタイル提案型ショップは、まさに自分に合った心地よさを発見する場所でもあります。

商品裏のストーリーもその場で調べられる

 商品のデザインをめでていると、「この作品にはどんな思いが込められているのだろう」という疑問が湧き上がってきます。そんなとき役立つのが、商品のプライスカード横に付けられたQRコード。このコードをスマホで読み取ると、商品の背景にあるストーリーを知ることができます。デザイナーの思いから、プロの視点などを知ると、その商品をどう自身のライフスタイルに生かしていくべきかまでイメージする手助けになります。

プライスカードの横にあるQRコードをスマホで読み込むと、商品の生産者やデザイナーの思いなど、背景情報を知ることができる。このQRコードも2012年度グッドデザイン・ベスト100に選ばれた技術
プライスカードの横にあるQRコードをスマホで読み込むと、商品の生産者やデザイナーの思いなど、背景情報を知ることができる。このQRコードも2012年度グッドデザイン・ベスト100に選ばれた技術

 食器など、日々使うものだからこそ、作り手の思いのこもった温かみのあるデザインのものを使いたい。例えば職人が一つ一つ丁寧に作ったカトラリー「ゴア」シリーズ(2016年度グッドデザイン賞受賞)は、繊細なデザインで美しい! 料理に添えれば、インスタ映えすると評判で人気のアイテムだとか。

ポルトガルのクチポール製カトラリー「ゴア」シリーズ。価格は900~3600円(税抜)。20代~30代の女性が、友人の結婚祝いに買うことが多いそう(右上)。包みにグッドデザインの「Gマーク」が入るため、贈答用として喜ばれるそうだ
ポルトガルのクチポール製カトラリー「ゴア」シリーズ。価格は900~3600円(税抜)。20代~30代の女性が、友人の結婚祝いに買うことが多いそう(右上)。包みにグッドデザインの「Gマーク」が入るため、贈答用として喜ばれるそうだ

 もう一つ、若い女性に人気のあるグッドデザインの商品が、石川県加賀市の歴史ある山中漆器の木地職人による技術で作られた木のコーヒーカップ。耐久性があり、重ねて収納できるのが魅力なだけでなく、反った飲み口がコーヒーの味わいをより感じさせる、手のひらで包み込んで飲むなどの新鮮な体験を作り出すと評価されました。グッドデザイン賞を受賞したのは昨年(2018年度)。

山中漆器の職人技術による品質と、コーヒーを楽しめる機能性を持つデザインが評価された「コーヒーカップ/安清式 木の器」(ブランディングコーヒー)。木のカップでコーヒーを飲むという体験は新鮮かもしれない。価格は3800円(税抜)
山中漆器の職人技術による品質と、コーヒーを楽しめる機能性を持つデザインが評価された「コーヒーカップ/安清式 木の器」(ブランディングコーヒー)。木のカップでコーヒーを飲むという体験は新鮮かもしれない。価格は3800円(税抜)
筆者が気になった「AccessNoteBook」(エコール流通グループ)。“文具王”高畑正幸さんが考案した「検索性を極めたノートブック」で、2015年度グッドデザイン賞受賞。目次が付けられるので必要な情報にすぐたどり着ける
筆者が気になった「AccessNoteBook」(エコール流通グループ)。“文具王”高畑正幸さんが考案した「検索性を極めたノートブック」で、2015年度グッドデザイン賞受賞。目次が付けられるので必要な情報にすぐたどり着ける

 このように、すべての商品がグッドデザイン賞を受賞しているので、買い物しているだけで、センスが磨かれそう。買い物へ行くというよりも、デザインとの出合いを求めて行く、と言ったほうがよさそうです。

 お店の入り口の「フロントガーデン」では、ワークショップや、職人の実演といった参加型イベントが不定期で開催されています。今年(2019年)春には、墨田区で伝統技術を伝える職人が実演する「すみだモダンPOPUP STORE」が、18年末には、新潟の燕三条の職人とともにお箸やスプーンを作るワークショップが開催されました。同年9月に行われた、やすりで磨くシルバーの指輪作り体験ができるワークショップ(1時間、参加費3000円)は女性に人気だったそうです。今年の夏は富山県高岡市の錫(すず)ブレスレットなどのブランドを扱う「NAGAE+POPUP STORE」を開催中です。

 自分を包む生活空間だからこそ、本当に気に入ったものだけを選び、思いが込められている商品をそろえる楽しみは心を豊かにしてくれます。ただ安いだけ、オシャレなだけではなく、そこにデザインとストーリーを求めたい。すてきなデザインに出合えば、そこから自身の生き方がきっと、見えてくるはずです。

取材・文/大崎百紀 写真/花井智子

FabCafe Tokyo
東京都渋谷区道玄坂1-22-7 道玄坂ピア1F→

GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA
東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE丸の内3階→
*2019年11月に渋谷店をオープン予定