私が日本で働き続ける本当の理由

 バランスが取れる「異分子」になって数年がたった頃、私が日本で働き続ける本当の理由は、きっと深いところにあると気づいたんです。それは、今までのように、一つの課題や表現においてではなく、もっともっと大きな意味で、「今」にネガティブになりがちな日本のパーセプションを少しでも変えるキッカケをつくりたいというものでした。

 つい一つの常識に縛られがちな世の中ですが、自分が無意識に縛られている常識や、もっともっと世界にはいろいろな常識ややり方があることに気づき、それぞれの特徴や目的や思想に応じて、うまくワークするものを選んだり、他と組み合わせたりすることで、自分たちにしかできないオリジナルなやり方をつくればいいんだ! となれば、新しい可能性が広がると思ったのです。極めて余計なお世話ではありますが(笑)。でも、自分が子どもの頃に6カ国を転々として、これに気づいて、可能性が広がったのと同じように、特に次の世代にもそのチャンスがあることは、とても大切だと思うんです。

 思えば、日本は、昔からあらゆる文化などに独自のツイストを加えて、目から鱗の日本らしい新しいカタチを次々と生み出してきました。いろいろな仕組みが変化しようとしている今だからこそ、自信をもって、もう一度この特技を生かしていく先に、たくさんのチャンスがあると思っています。

 もちろん、海外に行ったほうが活躍できることもたくさんありますが、「異分子」にとってこそ、実は今、日本が最も面白い場所なのかもしれません。

「異分子」にしかできないこと

 日本にいる皆さん! 人と意見や価値観が違うことで、さまざま苦労があると思います。でも、もしそれは全員が自分の「異分子」能力を最大限に発揮するための試練だとしたら? 力を合わせれば何億通りもの新しい可能性がきっと生まれます。ぜひ一緒にそれぞれの「異分子」にしかできないことで、世界の人も「やられたー!」と思うポジティブな進化を日本で起こしましょう!!

 最後に。気がつけば、この連載も今回で最後になります。5回を通して私が伝えたかったことは、私のように6カ国を転々としなくても、すべての人の中に少なからず「異分子」な部分が存在しているということ。まだ、なかなかそれに気づいていない方、無意識に押し殺している方、どう武器にしたらいいか分からない方がいると思ったんです。1回目の「ふつう」を極めてみたり、2回目の「苦手」を克服せずにサバイブする道を見つけたり、3回目の過去のグレートティチャーの言葉からヒントを探したり、4回目の自分の芝生の青さを見つけてみたり。と少しずつ自分らしい「異分子」の部分について考えるヒントになればとこの連載を始めました。日本の1億2000万人の「異分子」に不可能なことはきっとないはずです!

文/キリーロバ・ナージャ