一歩踏み出してやってきたオランダ

 日本でこの活動を続ける中で、私自身も少しずつ自分の中の「べき論」からの呪縛から解かれていった気もする。けれど、やはり環境と考え方は強くひも付いていて、完全に切り離すのはとても難しかった。

 私は数年間アメリカやシンガポールに住んでいたことはあるものの、基本的には日本生まれ日本育ち。日本で生きていく中で、「べき論」を20数年間かけて、自分の中に100%インストールしてしまっていた。つまり、嫌だなとは思うけれど、結局「べき論」を自分の評価軸にしてしまっていたのだ。そしてこの軸が自分を完全に抑えてしまっていた。

 そんな時、ヨーロッパにいる友人たちに再会する機会があった。同じコミュニティーの中でも、物事に対する考え方の幅が広く、それぞれがそれぞれの目標やゴール、成功の定義の中で生きていることを実感した。そして、彼らはその違いに対して議論することを楽しんでいた。正直日本では、同僚や友人など周りにいる人は結局世の中がつくった成功や目標をゴールにして生きていて、もし少しでも異なる考え方を持っていると、「変わった人」と見られるような傾向がある気がする。この環境に居続けると、「べき論」をアンインストールすることができないのではないか――そんな思いが膨らんだ。

会社のチームで行ったペタンク(フランス発祥の球技)ができるバーにて。皆、考え方が違っていて、その違いを議論することを楽しんでいる
会社のチームで行ったペタンク(フランス発祥の球技)ができるバーにて。皆、考え方が違っていて、その違いを議論することを楽しんでいる

 「リーンインする」ということは、自分を束縛せずに、本当にやりたいことに一歩踏み出すこと。正直ヨーロッパに住んだことも、働いたこともない。でも、新しい考え方を持つ人たちに出会い、さまざまな考え方を議論することで、これまで蓄積していた自分の中の「当たり前」や「べき論」をアンインストールできるのではないか、と。私自身の中にある束縛を取り払って、今後リーンインし続けるためにも、一歩踏み出してオランダへ移住することを決めたのだ。