男性の20%、女性の5%しか大学に進学しなかった時代

 考えてもみてください。われわれ世代のコーホートグループ(同年齢集団)の大学進学率(男女合計)はたったの12.8%です。男性の20.7%、女性の4.6%しか、大学に進学していなかった時代です(※)。大卒の男性たちは、自らの母親に仕えられてきた「地方の秀才たち」ですから、いざ家事や育児をやろうといっても体が動かないのです。

※2019年度『学校基本調査』年次統計の「大学〔学部〕への進学率〔通年度高卒者等を含む〕」参照。大学進学年度が1965年の数字。なお、2019年度では合計53.7%(男性56.6%、女性50.7%)。2020年度の大学進学率は54.4%。

 そんな男性たちの中で、妻にコーナー際に追い詰められて逃げ隠れしなかった男性だけが、育時連などをつくって新しい行動に出ました。一方で、どうやっても変わらなかった男性たちを、私の周囲にいた女性たちは「捨て」ました。実際、私の周囲における離婚率はものすごく高いです。

 育時連の代表をしていた、ますの・きよし(増野潔)さんはとても立派な方でした。東大卒のますのさんは共働きの妻と育児を分担するために、自分は夜間高校の警備員などをして、妻と時間をずらして子どもを育てるということを実践していました。1970年代の話です。そうやって働きながら家事も育児もやっていた男性たちのほとんどは出世しませんでした。ますのさんには、子育て経験を書いた『<家族>ってなんだろう』(現代書館、1981年)という著書もあります。

 私は、育時連が出していたミニコミ誌「いくじれんニュース」をずっと読んでいましたし、メンバーに友達も何人かいました。その中に1人だけ、順調に出世した男性がいたんです。彼に「なぜあなたはうまくいったの?」と聞いたら、ケラケラと笑って「有能な男は会社も無視できないんです」と言っていました(笑)。