社会学者の上野千鶴子さんは、日本人の働き方、幸せになる働き方について、立命館アジア太平洋大学学長・出口治明さんと語り合った『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』(祥伝社)を出版しました。上野さんに「世代別の専業主婦のイメージや、社会における女性の位置づけの変化」について伺います。

今の日本の若い男性は共働き志望だが、女性の稼得力はそれほど上がっていない

 さて、自分の若かりし頃と比べると、今の20~30代の働くママ・パパ像はずいぶん変わったなと思います。20~30代男性たちは「自分一人で妻子は養えない」とリアルに感じています。バブル以後、30年間の男性の所得水準は下がり続けていますから、ダブルインカムでなければやっていけないと思っているのでしょう。

 欧州では、ここ約10~20年の間で、男性が配偶者(妻)に求める条件の上位に「稼得力(稼ぐ力)」が入ってくるようになりました。一方で、日本の女性たちの稼得力は思ったほど求められる条件として上がっていません。この背景には、日本の働く女性の10人に6人が非正規雇用だという実態があります。正社員同士であっても、男女間の賃金に格差があります。

 また、日本で進んでいないものの一つに、高校や大学における労働者としての権利教育があります。私はなぜ大学で労働法を必修で勉強させないのか、不思議に思います。就活指導でメイクやお辞儀の仕方を教える以前にやることがあるだろう、と思うのです。今の学生たちは男女雇用機会均等法も労働法も知らず、働く男女の実態のデータを目にしたこともありません。

「男性が配偶者(妻)に求める条件の上位に日本の女性たちの稼得力は思ったほど上がっていません。この背景には、日本の働く女性の10人に6人が非正規雇用だという実態があります」(写真はイメージ)
「男性が配偶者(妻)に求める条件の上位に日本の女性たちの稼得力は思ったほど上がっていません。この背景には、日本の働く女性の10人に6人が非正規雇用だという実態があります」(写真はイメージ)