女性が圧倒的に少数である場合の弊害

 この本(『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』)の第三章の「私はこう働いてきた」でも書いたのですが、「空気なんて読まない人」と思われやすい私は、これまで空気を読んできました。周りの空気を読んだり、根回ししたりするというのは、オジサン的なスキルだとも言えます。しかし、組織の中でやりたいことを通そうと思えば、合意形成のために水面下で根回しするのはあたりまえです。女性もそういうスキルを身に付けた方がよいと思います。

 気を付けたいのは、ミイラ取りがミイラになること。あまりに空気を読むうちに、女性もオジサン化してしまって粘土層の再生産につながることもあるかもしれません。

 組織内で女性が圧倒的に少数である場合には、そういうことが起きてしまう可能性もあります。「初の○○」といわれている女性たちの中には、男性以上に男っぽく振る舞う人もいます。これはマイノリティーがマジョリティーの集団に入るときに起きやすい「オーバーアイデンティフィケーション(過剰同一化)」といわれる現象です。

 他方で、女性が、オジサンたちにかわいがられる「オジサンのペット」的な役を担うこともあります。それもその女性が男性の地位を脅かさない限り、という条件付きです。

 でも、組織内での女性が一定数を超えれば、女性たちはもっと自然体で過ごせるようになります。ですから、やはり数は大事です

オッサンは組織内に親分・子分関係をつくりたがる

 私たちの世代の場合、組織内で「メンター(引き立て役)」を探そうとすると、男性ばかりでした。でも、メンターがいなければ、男女にかかわらずチャンスはもらえません。私にも男性のメンターがいました。業界のオジサンたちにかわいがってもらって、チャンスをもらってきたのです。

 私のメンターになってくださった方たちは、大変ありがたいことに、「親分・子分」をつくらない人たちでした。「親分・子分」の関係をつくるタイプの人は、ホモソーシャルな集団を好みます。子分は言われたことをやる、いわゆるパシリです。私のメンターになってくれた方は子分を作らないタイプだったからこそ、私のような女性にもチャンスをくれたんだと思います。私はそれに心からの恩義を感じています。

 チャンスをもらったときには、パフォーマンスをして見せて、「おお、こいつはこういうことができるのか」「おもろいやっちゃ」と思ってもらう。チャンスはそのつど1回きりです。そのチャンスをものにして期待に応えなければ次は来ません。あらゆる仕事がそうですよね。男性はそういうチャンスを乗り越えてきています。そこでホモソーシャルな集団をつくれば「ういやつだ(『かわいいのう』という意味)」になって、後継者になっていきます。こうした親分・子分の関係をつくる人たちは「学閥」や「派閥」をつくる傾向にあります。