メンバーの半分を女性にしたら「変わった」

 津田さんによれば女性の割合を増やした効果があったそうです。それまでは国際、政治、社会、ジェンダーといった分野別に各委員を選んでいました。でもそうした構成だと、ジェンダーについて発言するのはジェンダー分野の担当者だけに限られていたそうです。ところが女性を全体の半分まで増やしたら、政治や経済、国際などのあらゆる分野の担当者が、男女関係なく、ジェンダーに言及し始めたのだとか。

 つまり、ジェンダーが「ゲットー(隔離されているという意味)」にならなくなったわけです。私たちはジェンダーの問題が女性問題に切り詰められることを「婦人科ゲットー」と呼んでいます。その「ゲットー」を外してみたら、すべての分野の人がジェンダーに関与することを発言するようになり、ものすごく大きな効果が出たと津田さんは言っていました。ジェンダーはありとあらゆる分野に関連する領域横断的カテゴリーなので、ジェンダーがゲットーに入れられてしまうのは困ります。

 女性が少ないと、それ以外のメンバーは「ジェンダーは女性の担当です。僕らには関係ありません」と思ってしまいがちです。今のSDGs推進室やダイバーシティー推進室もそうなっていませんか

 「ダイバーシティーは大事だ」と口先で言うだけで、自分の持っている意思決定権を行使しないトップが多すぎる。それが日本の現状ではないでしょうか。

ダイバーシティーはトップダウンでしか進まない

 ダイバーシティーはボトムアップではなく、トップダウンでしか進まない。私は最近、つくづくそう確信するようになりました。ボトムアップももちろん大事です。でも、現場の女性たち(ボトム)はとっくに変わっています。ボトムは変わっても、トップが変わらないから現状が変わらないのです。

 このトップを変えるための特効薬は「危機感」です。「このままじゃ、うちは立ちゆかなくなる」という危機感。私と出口さんでこれも一致したのは、「日本は変わらなければいけない。このままでいたら、じり貧になるだけだ」ということです。

 SDGsのSは持続可能性(Sustainable)です。ですが、変わり続けていなければ現状維持すらできません。このまま変わらなければ、必ずや「じり貧」が待っている。そんな危機感を日本の経営者は持たなさすぎるのではないでしょうか。本当の危機が訪れたときには、もはや手遅れかもしれません

 私は今の日本の若者には、泥船から下りて「早く、逃げたほうがよい」と言いたくなってしまいます(笑)。今、人生は長いです。私は企業からの就職の内定を得た学生に「おめでとう、でも、あなたの会社、あなたが定年になるまであるかしらね」と言います。企業の寿命は思うほど長くありません。今、安定している企業が30年後にどうなっているかなど、皆目見当がつかないのです。「今どうか」より、「これからどうなるか」「これから自分がそこでどういう働き方ができるか」という選択眼で判断すれば、企業の選び方もだいぶ変わるのではないでしょうか。

 親にも責任があるでしょう。「なぜあなたは親の私も知らないような企業に入るの?」と子どもを責める親もいますから。今や就職も結婚も一生ものではありません。自分の人生は組織の人生よりも長いのだと思えば選択の仕方も変わっていくでしょう。

構成/小田舞子(日経xwoman) 看板撮影/徳永 彩(KiKi inc.) イメージ写真/鈴木愛子