「オープンな育児」を目指して活動中

 日本の育児で、私が特に疑問を抱いているのは、限られたリソース、つまり、両親だけ、もしくは父親と母親のどちらかだけで育児をしていることが多い現状です。

 今は共働きの世帯が多いですし、一人親家庭も少なくありませんが、育児に関してはいまだ「家庭内でするもの」という考え方が根強いように思います。

 親や保護者だけで、いかにきちんと育児するかを重視するあまり、親のどちらかに負担が集中してしまったり、孤独を感じたりして追い詰められてしまうケースが多いのです。

 コロナ禍により、日本でもテレワークが進んだことで、「子どもがいる人は、育児しながら働けるからいいよね」と言う声も聞こえてきますが、実際はすごく大変だと思います。

 私は6月に、住み込みで知人の子どものベビーシッターをしましたが、赤ちゃんや未就学児の面倒を見ながら、在宅で仕事に集中するのは、とても難しいと実感しました。今後、ますますテレワークが普及することを考慮しても、やはり家庭内だけで育児を行うのは、親にとって負担が大きすぎると思います。

 例えば、保育園や幼稚園の送り迎えをシッターや実家に頼れなくても、信頼できる近所やコミュニティーの人がいれば、お願いできるようになりますし、それだけでも負担を軽くすることができるはずです。

 「親なら、自分を犠牲にして当たり前」「親だったら仕事も家事も育児も全部できるでしょ」という考え方があるのも事実です。でも、私は、自分も含めて、これから親になる人には、もっと子育てを楽しいものにしてほしいし、本来そうあるべきだと思います。

 世帯年収の差に関係なく、誰もが育児をしやすい環境、地域やコミュニティーで育児を支援できる社会の実現を目指し、どんどんアクションを起こしていきます。

 ずっと注目していたべビテックも、こうした取り組みを実現させるための手段の一つ。まずは、ITの力で、乳幼児を持つ母親の負担を軽減するための事業を進めています。

 今、働き方が大きく変わりつつあるように、未来の育児をもっとポジティブに変化させることが、私の事業の意義だと思っています。

 次回は、私のべビテックの取り組みについて具体的にご紹介していきます。お楽しみに!

構成・文/高橋奈巳(日経doors編集部) 写真/冨樫さん提供