上京後、どうにか周囲になじもうとして…

―― 18歳で北海道から東京に来てからは、どんなことをコンプレックスに感じたのでしょうか?

バービー 地元にいた頃は、古着やリメイクをした服が好きで、よく着ていました。私はそれが「イケてる!」と思って着ていたのですが、東京ではそのファッションセンスが通用しないと感じました。

 だから、そのとき流行していたブーツカットのジーンズをはいたり、白いT シャツを着たりしていましたね。自分を捨てきれない部分もありましたが、東京では前に出すぎたり、浮いたりしてはダメだと感じて、どうにか周囲になじもうとしていたんです。

「上京したての頃、東京では前に出すぎたり、浮いたりしてはダメだと感じて、どうにか周囲になじもうとしていました」
「上京したての頃、東京では前に出すぎたり、浮いたりしてはダメだと感じて、どうにか周囲になじもうとしていました」

―― バービーさんは、東洋大学のインド哲学科に進学するために、上京されたんですよね。なぜインド哲学科を選んだのでしょうか?

バービー 高校生になると、「人はなぜ生きるのか」「死とは何か?」など、哲学的なことを日々考えるようになっていたんですね。そのときに偶然、実家でチベット仏教の本を見つけたことがきっかけで、より深く哲学や宗教について学んでみたいと思い、仏教哲学の専門家がいる東洋大学のインド哲学科に入学しました。

 狙っていた先生のゼミにも入れて、自分としては自信満々で上京したのですが、インド哲学というと、当時はオカルトのイメージを持つ人も多かったんです。本来、仏教哲学とオカルトは全く違うものなのですが、いざ入学すると、学科の名前を答えるのが恥ずかしくなってしまって。好きなことを突き詰めているだけでは生きていけない空気を感じて、当時は無理をして周囲に合わせ、自分も雑誌のコーデをまねしたりしていました!

―― 周りの目を気にして合わせてしまうことは、きっと誰にでもありますよね。

バービー もちろん、今では大学で宗教や哲学について学べたことは、本当によかったと思っています。ただ、上京して初めて、何かと「比較」することで「自分の外」に苦しみが存在するという感覚を経験しました。上京前までは、冒頭でお話ししたように、自分の主観の世界の中だけで生きていて、悩みや苦しみは「自分の中」にあるものだったからです。

 そう考えると、コンプレックスは第3者の価値観が内在化され、その第3者の価値観を基準にして、自分と他人を比較することで生まれることもあるのかなと思います。

―― 確かに人との比較は、コンプレックスが生まれる要因の1つなのかもしれませんね。自分ではなく、他人の価値観に無理に合わせようとすることで生まれることも多いと思います。