もしも思春期を東京で過ごせていたら?
―― 上京後、その他にコンプレックスに感じていたことはありますか?
バービー 大学時代に映画サークルの人たちと仲良くなったのですが、私と同い年か1つ上の人たちが、映画をつくっていることに衝撃を受けました。地方ではアートに触れる機会も少ないですし、クリエーティブな分野で活躍している人に出会うこともほとんどなかったので、まるで違う国の話というか、SFの世界のように思えたんです。
そのときに、東京で育った18歳と、地方出身の18歳では、スタートラインが全く違うなと思いました。
東京で育った人たちは、18年間でさまざまなアートやクリエーティブな情報に触れ、それらをスポンジみたいに吸収していたのに、私が地元の北海道で見ていたのは空と土だけ(笑)。もちろん、地方で大自然に囲まれて育ったからこそ養われた感性もあると思いますが、「東京で育っていたら、もっとクリエーティブな道があったかもしれない」と考えることはありました。めちゃくちゃタラレバの話ですけど(笑)。
だから、芸大生や美大生のように、アートやクリエーティブ分野で先を行っている人たちに対するコンプレックスはありましたね。「私だって思春期を東京で過ごせていたら、この粗削りな原石はもっと磨かれていたはず!」という前向きな妄想をして、自分で自分をなだめることはあります(笑)。
そう考えると、自分の中にあるものを大事にしているからこそ、自分が持っていないものを持っている人に対して、コンプレックスを抱くこともありますよね。
【下編】バービー 気分屋な自分に「ずっと振り回されている」
取材・文/真貝友香 写真/洞澤佐智子