「コンプレックスがあって良かった」と思えたことは?

―― コンプレックスを抱いたり乗り越えたりしたことが、「今となっては良かったな」と感じることはありますか?

福井 「追求する」ことを覚えられたのは良かったですね。コンプレックスを解決する方法を徹底的に調べて、できることは全部やって、それでも無理ならしょうがないという精神を自分の中にたたき込めたことは、今、起業家として事業を追求していく姿勢の基盤になっています。「可能性がある限り諦めない」という粘り強い精神が養えたのは、地黒であることに悩んだからこそ。コンプレックスのおかげですね

―― 今、コンプレックスを抱えている人にアドバイスするとしたら、何を伝えたいですか?

福井 自分を肯定してくれる人とたくさん会話をしてほしいです。コンプレックスを正直に打ち明けると、意外と本心から「いいと思うよ」と言ってくれる人がいるはず。私の場合も、コンプレックスを周囲の人に話してみたら、地黒に憧れている人がいることや、色白で悩んでいる人がいることを知って、視野が広がり、心が楽になりました。

 コンプレックスって、幼少期や思春期の頃にバカにされたり、からかわれたりしたことがきっかけで生まれるものもあると思います。そして、子どもの頃は自分で環境を選べないので逃げることができず、さらに傷を深めてしまうことも多い。でも、大人になったら自分で環境を選ぶことができるはず。信頼できる人にあえて打ち明けてみて、「自分ではコンプレックスなんだけど、私のココを褒めてくれない?」と言ってみるのも一つの手。居心地のいい環境や、肯定し合える関係性を自分でつくっていくことができると思います。

 もちろん、すべての人が自分のコンプレックスを肯定してくれるわけではないし、否定する人もいるかもしれない。でも、反対に長年のコンプレックスを「気にならない」と言ってくれたり、褒めてくれたりする人も現れるはず。なかなか打ち明けづらいことだとは思いますが、コンプレックスや弱さを伝え合えたり、褒め合ったりできる関係性を、大人になった今からでもつくっていけたらすてきだなと思います。

「自分を肯定してくれる人とたくさん会話をしてほしいです」
「自分を肯定してくれる人とたくさん会話をしてほしいです」

 続く下編では、婚約の破談から起業して再スタートを切った経緯や、経営者としての考え方などを聞きました。

取材・文/川辺美希 構成/青野梢(日経xwoman doors)写真/Instagram(@hitton28より)

下編「福井仁美 婚約破談・仕事ナシのどん底から経営者へ」では、次のストーリーを展開

■「王様のブランチ」卒業後、婚約が破談に
■「お先真っ暗」な状態から、どう再起した?
■美容サロンを経営することになった経緯は?
■起業してから最も苦労したのは○○
■起業家として大切にしていることは?