新連載「20代でやめたこと、始めたこと 30代でやめたこと、始めたこと」では、活躍する先輩世代の女性に20代、30代をどう過ごしたか、何に壁を感じ、どう乗り越えたか、仕事への達成感を抱いたのはどんなときだったのか、やめてよかったと思っていること、始めてよかったと感じていることなどを、根掘り葉掘り伺います。第1回はオンライン家計簿サービスを運営するZaim(ザイム)代表取締役の閑歳孝子さんです。

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(下)Zaim閑歳孝子 一人で起業 記憶ないほど夢中で開発

分からないところには、飛び込みたくなる

「新卒で出版社に入社しましたが、4年後に大学時代の友人が起業することになり、私も誘われました。すごく悩みましたよ」(閑歳さん)
「新卒で出版社に入社しましたが、4年後に大学時代の友人が起業することになり、私も誘われました。すごく悩みましたよ」(閑歳さん)

 私は文章を読むのも書くのも好きだった割に、出版業界がどんな世界かよく知らなかったんです。分からないところには飛び込んでみたくなる性分で、大学卒業後は、ビジネス系の出版社(日経BP)に入社し、編集記者として社会人生活をスタートさせました。

 しかし、その一方で、IT(情報技術)やインターネットに対しても並々ならぬ興味関心がありました。大学時代には、学内の学生や職員が使えるSNS(交流サイト)を友達4人と開発したことも。約1年後には同じ大学の現役学生の9割以上に使ってもらえるようにまでなりました。こんなふうに何かをゼロからつくり上げることが好きでした。

 入社4年目に、大学時代の友人が起業することになり、私も誘われました。すごく悩みましたよ。記者の仕事は面白いし、同僚や先輩、上司にも恵まれていました。当時はまだ新卒で入った会社に長く勤める人のほうが世間的にも多かったですし。

 でも、「ベンチャー企業で、出版と全く違う分野の仕事を始められるチャンスなんて、これを逃したらもうずっと来ないんじゃないか」という焦りもありました。一方で、「ベンチャー企業に転職したら、この先もう二度と、ベンチャー以外の企業には戻れないんだろうな」という変な思い込みもあって。結局、清水の舞台から飛び降りる思いで、新卒入社した出版社を辞めました。