連載「20代でやめたこと、始めたこと 30代でやめたこと、始めたこと」では、活躍する先輩世代の女性に20代、30代をどう過ごしたか、何に壁を感じ、どう乗り越えたか、やめてよかったと思っていること、始めてよかったと感じていることなどを、根掘り葉掘り伺います。第2回は東京大学法学部を全単位「優」で卒業後、財務省の官僚を経て、弁護士になり、2015年には米ハーバード・ロースクールに留学し、ニューヨーク州弁護士に登録……という輝かしい経歴を持つ山口真由さんが語る意外なストーリーです。

(上) 山口真由 東大「全優」で卒業も仕事ができず泥沼の日々
(下)山口真由 転職先決まらず米国へ逃亡&運命の出合い ←今回はここ

ツケマ二重付けに鼻張りで、転職面接に全落ち

過去の経験や当時の心境をさらけ出し、赤裸々に語ってくれた山口さん
過去の経験や当時の心境をさらけ出し、赤裸々に語ってくれた山口さん

 転職エージェントに相談して、次の仕事を決めてから退職を告げようと思ったのですが、この転職活動が全くうまくいきませんでした

 この期に及んで、まだ「私は王道」という思い込みが抜けておらず、最初は企業法務の事務所を探しました。でもどうしても、バラエティ番組に出演していることがマイナスに評価されてしまうのです。法律事務所にとってクイズ番組に出ている人を採用するメリットはありませんから。

 さらには、勘違いも甚だしく、転職しようと考えた事務所をろくにリサーチもせずに「とにかく私を見て!」と丸腰で面接に行ったので、選考が進むはずもない。受けた企業は全落ちでした。最終段階まで残っても、なぜか最後の最後で、女性パートナーに反対されることが重なりました。

 私のほうにももちろん問題はあったと思います。当時は見た目からして過剰でした。普通の格好で行けばいいのに、ツケマ(つけまつげ)は二重付け(上まぶたと下まぶたの両方に付ける)、メークは鼻張り(鼻の脇に陰影を付けて鼻を高く見せるメーク法)。すべてこんな具合でしたから、「一緒に働きたい」と思われなくても仕方ありませんよね。自分を大きく見せるために必死だったんだと思います。

 また同じ頃、私は仲良しだと思っていた職場の同期が「司法修習(*)時代から(山口さんは)周りから浮いていた」と陰で言っていることを耳にし、「私って、他人から好かれてもいないし、評価もされていない」と自信を失いました。

*司法修習…司法試験合格後、法曹資格を得るために必要な、裁判所法で定められた法曹教育制度

逃亡先の米ハーバード・ロースクール

 さて、身の振り方が決まらずどうしたものか悩みました。そのとき勤めていた法律事務所には、米ハーバード・ロースクールに留学させてもらえる制度があって、私にもその権利がありました。でも、英語は大の苦手。だから、自分が評価されるはずのない場所にわざわざ身を置くことはどうしても避けたかったのですが、どこも私を拾ってくれず、最後は逃亡するかのようにハーバード行きを決断しました。

 でも、そこからがまたつらくて。社会人になって「底」を経験したと思ったら、その先にまだ「底」があった、という感じです。

キラキラに見える人生、実際は泥沼だった。何度でも失敗からはい上がる、折れないキャリアのつくり方
『挫折からのキャリア論』
著者 :山口真由
発行元:日経BP
定価 :1870円(10%税込み)

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【内容】
この本では、私の失敗談を「これでもか!」というほど紹介します。私たちがお互いの弱さを開示して、手を取り合っていくことで、職場でもっと違う振る舞い方ができるようになるのではないかと思うからです。