女性や看護師の医療従事者に不安、睡眠障害

 中国河北省で新型コロナウイルス感染症患者の治療を行う、34の医療機関の1257人の医療従事者への調査では、50.4%にうつ症状、34%に睡眠障害、44.6%に不安障害、そして71・5%にストレス状態が確認された。特に、女性や看護師、また、患者のケアに直接かかわっている人に、うつや不安、睡眠障害などがみられたと、報告されている(※)。世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス対応をしている医療従事者がメンタルヘルスを保つために考慮すべき点として、「十分で、栄養のある食事をとる」ことを挙げている。
(※ JAMA Netw Open. 2020;3(3):e203976. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.3976 )

FBの呼びかけで集まった大手含め18社の支援

 このような現状を背景に、オイシックス・ラ・大地はまず、野菜ジュースを都内の2つの医療機関に、無償で届け始めた。すると、少しでも栄養をとれるのはありがたいと、病院側から感謝されたという。そこで、「食」の支援の取り組みを、協力と連携で、広げられないだろうか。医療機関側の調整の負担を抑えながら、必要なものを必要な場所に届けられないだろうか――高島さんがFacebookページで呼びかけたところ、多くの企業から支援の申し出があった。

 最終的には、木村屋總本店、伊藤園、カゴメなど18社の企業からサポートが集まったほか、よりスムーズで効果的な支援を可能とするためのプラットフォームづくりに、一般社団法人RCFとココネット(セイノーホールディングスグループ)が加わった。現在も、多くの企業から支援の問い合わせが相次いでいるという。現時点では、常温、個包装、そして最低ロットを500人分以上という条件で、食品物資を無償提供するサポート企業を集めている。

 高島さんは、「実質2日ほどの準備期間だったが、大手から老舗まで、20社ほどの会社さんの協賛でスタートでき、迅速な意思決定に感謝している。今後、可能な限りエリアの拡大に挑戦していきたいと」と話している。

ニューヨークで取り組む日本人起業家も

 感染者が14万人を超え、1万人以上が亡くなっているニューヨーク市でも、ひとりの日本人起業家が、動いていた。米国で初めてイチゴの植物工場をつくったOishii Farm(オイシイファーム)の古賀大貴CEOは、連日、収穫したすべてのイチゴを、自ら、医療従事者に届けている。

医療の現場に届けられたイチゴ(写真提供/Oishii Farm)
医療の現場に届けられたイチゴ(写真提供/Oishii Farm)
医療の現場に届けられたイチゴ(写真提供/Oishii Farm)

 古賀さんは、「医療現場では、防護服やマスクも不足し、医療キャップの代わりにバンダナを頭に巻きながら、ひとりでも多くの患者を救おうと、働いている人たちがいる。自分にも何かできないかと、考えるのは自然な流れだった」と話す。