「最前線で働く人に感謝」という言葉を見かけたことはあるだろうか。もともとは、アワシャーレ代表取締役でNPO法人GEWEL代表理事の小嶋美代子さんが、仲間同士で思い付きで始めたSNSのフレームだ。今、多くの人のSNSで、商店街の店先で、街の自動販売機で、配達車で……この言葉がシェアされ、全国各地で拡がりを見せている。「この非常事態に私にできることはないのだろうか、という無力感から始まった」感謝の言葉。共感の連鎖から、小嶋さんが学んだことを振り返ります。

「最前線で働く人に感謝」――思い付きで友人たちと始めたこのフレームが今、全国各地に広がっている
「最前線で働く人に感謝」――思い付きで友人たちと始めたこのフレームが今、全国各地に広がっている

 独立して3年。NPO法人の代表をしたり、大学で講師をしたり、自営で組織のダイバーシティについての講演やコンサルティングの仕事をしたりしている私は、定期的に自分で設定した休暇を取得することにしています。2020年3~4月は、もともと、仕事を離れてゆっくり自分の時間を取るサバティカル(長期休暇)の予定でした。一日中何もしない時間を過ごすのは想定内。子どもの休校や働き方の急変など、多くの人々が余裕のない生活を送り始めた中、私自身は、新型コロナウイルスの恐怖を感じながらも、比較的スムーズに社会の変化を受け入れることができていました。ただ、「今、余裕がある私だからこそ、この緊急事態に何かできることはないのだろうか……」と考えながらも、大したこともできないまま、時間だけが過ぎました。

世界8カ国の友人との情報交換で得た気づき

 ちょうどその頃、弊社の女性社員が留学先のカナダで心細い思いをしていたのです。「どんなことに困っているのか、今の私にできることはないのか」と、SNSで問いかけたところ、「オンラインでおしゃべりをするのがいい」と近い友人たちに教えてもらいました。

 そこで、彼女だけでなく、外出禁止が先行する海外にいる友人たちにも声をかけてみました。フィリピン、オーストラリア、イギリス、フランス……世界各国の友人たちとつながりました。実際、それぞれの生活や天気だがどうとか花が咲いたとか、ちょっとしたことを話しただけでしたが、お互いに顔を見て、とりとめもない話をする時間は、参加したみんなの気持ちを落ち着かせてくれました。いら立ちや寂しさ、怒りなどを表現できる場があることは、これほど大切なことなのかと実感しました。「参加者の中で一番余裕な日々を送っているかもしれない」と思っていた私自身も、気持ちを吐き出すことで心のコリがほぐれていくような感覚を抱きました。

誰もが誰かに感謝している

 ひとしきり自分たちの思いを共有した後で、私は、大きな気づきを得ました。「安全に暮らせていること、支えてくれている人たちへの感謝の気持ち」を全員が口にし始めたのです。

 身内で医療に従事している人、銀行業務のために毎日出勤している人、ネット通販を迅速に運んでくれている人、地域のゴミを予定通り回収してくれる人……。みんなの声には、当たり前の毎日をこんな状況下でも当たり前にしてくれている人への感謝があふれていました。