コロナ禍を機に、日常や常識が大きく変わりました。先が見えない状況に不安感を覚えやすい今、私たちはこの危機とどう向き合えばいいのか。押さえておきたい現状や一歩進むためのアドバイスをジャーナリストの池上彰さんに聞きました。

前編 池上彰さん教えて! 仕事、働き方、五輪の行方は? ←今回はここ
中編 コロナ禍で男性本位の政治は変わる 池上彰
後編 池上彰 米中の対立は? コロナ禍の世界の読み解き方

派遣労働者の「雇い止め」が深刻に

 コロナ禍の影響で深刻なのが、非正規労働者の「雇い止め」です。特に、派遣労働者たちは、3カ月や半年単位で仕事を契約している人が多いのですが、多くの人たちが6月末で期限を迎えるわけです。1カ月前のちょうどこの5月末に更新のタイミングが集中しますが、「6月末で契約は終わりです」と相当程度の雇い止めが起きる可能性がありますね。

 雇用主にとって、派遣労働者の雇い止めは「解雇」には当たらず、リストラの対象になりやすいんです。2008年に起きたリーマン・ショックのときには、「年越し派遣村」ができました。当時は特に自動車産業の派遣労働者が大勢いて、仕事がなくなると同時に会社に借り上げてもらっているアパートからも出ていかざるを得なくなり、突然多くの人がホームレスになりました。それで、年が越せない人を救済するため、日比谷公園にボランティアたちが年越し派遣村を作ったのです。ホームレスになる派遣労働者が大量に出てくる危険性があると心配しています。

日経doorsオンライン独占インタビューに応えてくれた池上彰さん。「6月以降派遣社員の相当程度の雇い止めが起きる可能性がありますね」
日経doorsオンライン独占インタビューに応えてくれた池上彰さん。「6月以降派遣社員の相当程度の雇い止めが起きる可能性がありますね」