コロナ禍によるウイルス対策では、負の影響の多くが女性を強く直撃しています。政治の場に女性が少ないことの弊害や、今後の女性活躍への期待、緊急事態宣言後新しい生活様式への見解についてジャーナリストの池上彰さんに聞きました。

前編 池上彰さん教えて! 仕事、働き方、五輪の行方は?
中編 コロナ禍で男性本位の政治は変わる 池上彰  ←今回はここ
後編 池上彰 米中の対立は? コロナ禍の世界の読み解き方

日本のウイルス対策は、生活者視点が足らなかった

 世界経済フォーラム(WEF)によるジェンダー・ギャップ指数では、調査対象となった153カ国のうち、日本は過去最低の121位。「政治」と「経済」の分野でポイントを下げており、主要7カ国(G7)の中では最下位が定位置となっています。今回の一連の新型コロナウイルス対策も、意思決定の場に一人でも女性がいれば、突然全国の小中高に臨時休校を要請するといった場当たり的な対策にはならなかったでしょう

 それでいうと、世界の首脳たちの中で、今回国民の心に染みるようなメッセージを投げかけてくれる人はほとんどが女性。台湾の蔡英文総統、ニュージーランドのアーダーン首相、ドイツのメルケル首相も見事ですよね。

 そこで感じたことは、女性には生活感があるということです。メルケル首相は、自分でスーパーマーケットへ行って買い物かごを下げて、食材を選んでレジに並んでいる。だから国民へのメッセージの中でも、他国の首脳たちが口にする医療従事者への感謝はだけでなく、スーパーのレジ係の人や商品を棚に補給する人に対しても「社会生活の機能を維持してくださってありがとう」という言葉が出てくる。日ごろからスーパーマーケットに行っているからこそ、社会を支えてくれるのはどんな人なのかが分かるということだと思います。

「世界の首脳たちの中で、今回国民の心に染みるようなメッセージを投げかけてくれる人はほとんどが女性でした」と話す池上彰さん
「世界の首脳たちの中で、今回国民の心に染みるようなメッセージを投げかけてくれる人はほとんどが女性でした」と話す池上彰さん