コロナ禍によって米中対立の不穏な空気の中、世界は、日本はどうなる? 最終回ではグローバルな視点から、ジャーナリストの池上彰さんに話を聞いていきます。

前編 池上彰さん教えて! 仕事、働き方、五輪の行方は?
中編 コロナ禍で男性本位の政治は変わる 池上彰
後編 池上彰 米中の対立は? コロナ禍の世界の読み解き方 ←今回はここ

米中間の激しい対立は、米大統領選挙までが山場

 新型コロナウイルスへの対応で、アメリカと中国の激しい対立構造が浮かび上がっていますが、さすがに戦争はできないということは両国とも分かっています。今のアメリカと中国の対立は、どちらのリーダーにとってもWin-Winの関係。米中関係が緊迫してくると、トランプ大統領は中国に対してガツンと言ってくれるからと支持する人がいて、大統領選挙で優位になるというわけです。

 一方、習近平国家主席にしても、今回の新型コロナウイルスの拡大を、最初は防ぐことができなかった。そのために、大勢の人がひどい状況をもたらしたわけで、中国の国民には不満があります。そんなときに、アメリカに理不尽なことを言われていると敵意をあおる。国外に敵をつくると国民は団結するんです。

 習近平国家主席の体制に不満を持っている中国人はいっぱいいるけれど、アメリカから攻撃されると、みんな愛国心があるからカチンときます。結果的に、習近平国家主席の下でまとまるということになります。どちらにとってもWin-Winになるから、対立を演出している。そこは冷静になって判断し、むやみに不安に思ったり、戦争が始まると思ったりしないほうがいいですね。トランプ大統領と習近平国家主席の衝突は、11月に行われる大統領選挙まで。中国も反撃はしますけれど、アメリカは大統領選挙までと分かって対応しています。

「中国とアメリカはどちらにとってもWin-Winになるから、対立を演出している」と話す池上彰さん
「中国とアメリカはどちらにとってもWin-Winになるから、対立を演出している」と話す池上彰さん