withコロナの時代の生き方や、本当に必要とされる価値について、出版社ディスカヴァー・トゥエンティワン元社長・干場弓子さんと独立研究者の山口周さんに語ってもらうこの対談。これからの時代に求められる仕事観の転換について聞いた前編に続いて、後編では、自分の得意な仕事を探す方法について詳しく教えてもらった。

前編 干場弓子×山口周 withコロナで人生を問い直す
後編 干場弓子×山口周 楽しい仕事で生きる方法 ←今回はここ

20代では自分の得意なことは分からない

―― コロナをきっかけに、自分にしかできない仕事や自分に向いている仕事は何か、改めて考える人も増えました。自分が得意なことを見つけるために、何をすればいいと思いますか?

山口 僕自身、物書きの仕事が自分の中であり得るなと思ったのが40歳すぎでした。自分は向いていると思ってコンサルタントとして働いてきましたけど、明らかに自分より得意な人が多いことが分かってきて。30代後半ぐらいで、明らかにこの世界ではあと20年は働けないと思ったんです。一方で、何がやりたいのかも分からないと思ったとき、自分が「こういう人生、いいな」と思う人をざっと集めてみました。当時、一番楽しそうだなと思えたのが茂木健一郎さんだったんですよ。茂木さんのキャリアをたどってみると、もともと『脳とクオリア―なぜ脳に心が生まれるのか』という本で注目されているんです。だからまずは自分もものを考えて書くということをやってみようと思い、取りあえず10冊書いてみようと書き始めました。

―― できるだけ早く転職や働き方の転換をしたいと考える人も多いです。そういう方が、進むべき方向を的確に見つけるためにはどんなスタンスが必要でしょうか。

山口 僕自身、本を書き始めたのは40をすぎてからだし、20代なんて、自分に何ができるか、何が得意かなんて1mmも分かっていないと思います。やってみて初めて、人と比べて自分はこれが得意だとか、すごく楽しいということが発見できる。早めに自分の可能性を見限るのではなくて、面白そうだなと思ったらなんでも足を突っ込んでみてやってみる。その過程を、定期的に振り返ることが大切です。

干場 自分も会社経営には向かないと思っていたんです。お金の計算なんか嫌だわ、と思っていて(笑)。書籍の企画だけでなく資金繰りの面もやってみたのですけど、やっているうちに意外と向いていることが分かりましたね。ディスカヴァー・トゥエンティワンを離れてからも、もう編集はいいやって思っていたんですけど、自分の原稿を書くよりもやっぱり編集の仕事が楽しくて。自分で何かを書くよりも、この人のこういうところをこう伝えたらいいなとか、そういう編集やプロデュースの仕事が好きなんだなって、改めて思いましたね。

干場弓子さん(左)と山口周さん(右)。自分の強みを見つめ直す方法を語り合った
干場弓子さん(左)と山口周さん(右)。自分の強みを見つめ直す方法を語り合った