コロナ禍で生き方が問われた

北野 転職を考える人が増えたというのは、よく分かります。実は、コロナ禍の5~6月に私の著書である「転職の思考法」という本がよく売れました。

 このコロナ禍で会社の経営者やリーダーの価値観が如実に出たと思います。分かりやすい例を挙げると、すぐに在宅勤務に切り替えたのか、それとも出社を強制するのか、経営者の本音が出たと思います。その対応を見て、この会社で働いていても、ダメだなと気付いて、転職を考える人が増えたのではないでしょうか。また働き方だけでなく、生き方そのものを考えて、転職という選択肢を選んだ人も多かったのではないかと思います。

―― 確かに、このコロナでこれからの人生について思いを巡らせたという声も少なくありませんでした。

何も考えていない=人生の消化試合に

北野 現在社会では寿命が延び、終身雇用が無くなってきています。そうした状況でコロナ禍となり、何が正解か分からない事態に陥っています。

 であれば、仕事は「自分が何を大事にしたいか」という軸を大切に選ぶしかないと思っています。人生が長くなって、技術やスキルは身に付くけれど、苦しい、楽しくない仕事を40~50年続けるのは、よく考えたら結構絶望的なことですよね。人生が短くて終身雇用が担保されているのではあれば、まあいいかと耐えて生きていくこともできますが、今の時代は何も保証されていない。その中で嫌いな仕事をずっと続けていくのは、人生の多くを消化試合のように生きるのと同義ですよね

 でも現実的には、一つの仕事だけで、自分がやりたいことをまかなうのは難しいことだとも思います。だから、副業したり、趣味を見つけたりして、分散させる。私は本にも書いていますが、「価値観を分散させること」が重要だと思います。

―― 好きを仕事にするということでしょうか?

北野 私個人としては「好きを仕事に」「好きが一番お金になる」はまやかしだと思っています。信じすぎないほうがいいのではないか?と思います。でも、好きなものを探し続けることは絶対に意味があります。つまり「自分はどういう価値観を持っていて、何が満たされるからこれが好きか」を理解しているかが重要なんです。実はそれが分かっていない人が多い。

「『自分がどういう価値観を持っていて、何が満たされるからこれが好き』って言われてみないと分からないし、意外とみんな気にしてないんですよね」
「『自分がどういう価値観を持っていて、何が満たされるからこれが好き』って言われてみないと分からないし、意外とみんな気にしてないんですよね」