新型コロナウイルスの影響により、挙式を中止・延期するカップルが増加し、大きな打撃を受けた結婚式業界。業界最大手のテイクアンドギヴ・ニーズは緊急事態宣言中に全店舗で結婚式の施行を中止することを決め、2021年3月期の連結最終損益が最大165憶円の赤字になると発表した。コロナ禍でリモート結婚式など新たな結婚式のカタチも模索される中、従来の結婚式はどう生き残っていくのか、岩瀬賢治社長に話を聞いた。

前編 結婚式業界1位のT&G 「有事のときこそ本性が出る」 ←今回はここ
後編 T&G 倒産寸前の過去がコロナ禍で生きている

岩瀬賢治社長 1990年名古屋観光ホテル入社。2002年にT&Gに入社し、ウェディング事業本部長などを経て、2015年から代表取締役社長に就任
岩瀬賢治社長 1990年名古屋観光ホテル入社。2002年にT&Gに入社し、ウェディング事業本部長などを経て、2015年から代表取締役社長に就任

新郎新婦の決断の後押しをしたかった

日経doors編集部(以下、――) 全国に60以上の結婚式場を運営されていますが、緊急事態宣言が発令した4~5月は全ての店舗で結婚式の施行を中止しましたね。どういう経緯でこの決断をされたのですか?

岩瀬賢治さん(以下、岩瀬) 2月くらいに新型コロナウイルスの話題が上がる中、新郎新婦の方々から「不安を感じている」という声を店舗のスタッフから聞いていました。お客さまが結婚式をやる、やらないという判断をする選択肢を式場側からきちんと提示しないとただ悩んでしまうだけになってしまうと思ったんです。

 そこで、3月末に緊急事態宣言が出るという報道があったタイミングで、全店舗で結婚式の施行を中止すると決めました。お客さまが結婚式をする、しないか決断に悩んでいることの後押しになるかなと思いました。もう一つは大切な社員や取引先の方々の健康を守ること。もし結婚式の施行を中止しなければ、社員は感染するかもしれないという不安を抱えながらサービスを提供しなくてはいけません。社員もアルバイトも本人だけでなく、彼らの両親が心配しているという話を聞きました。一企業としてベストな選択肢だったと思っています。