ストーカー相談は年2万件 「他人ごと」と思わないで

 好意を持った相手に受け入れてもらえないときなどに、つきまとったり待ち伏せたりするのが「ストーカー行為」。会社や家の近くまで尾行したり待ち伏せたり、頻繁に電話やメールを繰り返すといった迷惑行為で、暴行や殺人にまで至ることもあります。

 ストーカーの相談件数はここ7~8年は2万件前後でずっと横ばい状態。2019年も2万912件の相談が寄せられています。

 ストーカー被害は元交際相手や配偶者など面識ある男性につきまとわれるケースが多いものです。それを避けるためには、曖昧な別れ方をしないことが大切です。

 「嫌いになった、別れたいとはっきり言うと相手を傷つけると思って、きちんと別れを告げない人もいますが、それは危険。自分は自然消滅したつもりでも、相手は別れたと思っていない可能性もあるからです」

 別れるときはきちんとその気持ちを伝えて、お互いに納得する形でピリオドを打っておきましょう。

 ストーカーの被害を防ぐためには、個人情報の扱いにも気を付けてください。郵便物やごみには個人情報が詰まっていて、いつどこに行ったか、どんな店で何を買っているか、記載されたレシートや宅配便の伝票などから生活スタイルまで分かってしまいます。郵便物はため込まないようにし、個人情報が記載された部分や見られたくない紙類はシュレッダーにかけて処分しましょう。

 ブログやインスタなどのSNSに必要以上に詳しい情報を載せたり、今いる場所や行動を書き込んだりするのも避けたほうが無難です。特に気を付けたいのは次のような点です。

画像をアップロードしたとき、位置情報を消したつもりでも残っていることがあるのでアップ後にも再確認する

スマホなどのカメラの精度が上がっていて、背景などが映り込み、細かい文字まで判別できることもある。画像を投稿する前に、窓ガラスや花瓶、鏡などに自分の顔や住所、よく買い物をする店の紙袋などが映り込んでいないか確認を

□旅行や買い物時などに「〇〇なう」「ここに来てまーす!」などと投稿すると、今いる場所も分かるし“家を留守にしている”と発信することになる。その場で発信しないで、1日くらい時間を置いてから投稿しよう

痴漢や盗撮被害の予防法

 痴漢や盗撮の被害は、昼間や人通りの多い駅の階段などでも起きています。被害に遭ったとき、自分の体を触ったり盗撮したりした犯人をつかまえるのは難しいし危険を伴うので、被害に遭わないようにできる限りの注意を払いましょう。

 「夏場で薄着になるときでも、短いスカートや露出の多い服装は避けたほうが安心です。階段やエスカレーターなどの高低差を利用して盗撮する事件も多いので、スマホの操作や音楽を聴きながら歩かず、後ろに不審者がいないかなど周囲に目配りしながら歩くように心掛けてください」

 万が一被害に遭ってしまうと、その後も事情聴取や被害届の提出などで何時間も警察に拘束されることもあります。警察での取り調べで「バッグをどちらの手で持っていたかなど状況を再現させられ、スカートの長さなど、こと細かく調べられた」という被害者もいました。また、事件の裁判などのたびに検察庁や弁護士から通知が来るため、事件のことが忘れられなくなるケースもあります。被害に遭ってしまうと精神的なショックが大きく、元の日常生活には戻れなくなることもあるのです。

 ニュースなどで事件を目にしたときは、「自分には関係ない」ではなく「このあと、自分にも同じことが起きるかも」「もし巻き込まれたらどう対応すればいいか」と自分に置き換えて考えるように意識づけをしましょう。


 後編「一人暮らし女性 犯罪被害リスクを減らす11のポイント」では、コロナ禍で増えたネット通販などにからむ犯罪や、一人暮らし女性が巻き込まれる可能性のある犯罪を防ぐための注意点を紹介します。

話を聞いたのは…
セコム 女性の安全委員会 仁村 園子さん


「セコム 女性の安全委員会」は2007年にセコムの女性社員6人が立ち上げた組織。女性の毎日を、より「安全・安心」にすることを目的に、セキュリティーのプロと女性ならではの視点から、さまざまな防犯に関する総合的な情報の発信を行っている。「女性のためのあんしんライフnavi」

取材・文/加納美紀 取材・構成/加藤京子(日経doors編集部) 写真/PIXTA