新型コロナウイルスの影響で、生活様式ががらりと変わりました。テレワークや外出自粛などにより自宅で過ごす時間が増え、宅配需要が増えたことから、宅配業者を装った強盗被害も。そのほか、自宅への侵入犯やネットショッピング詐欺、性犯罪など、働く女性を取り巻く環境には、想像以上に危険の種が多くあります。「自分なりに防犯対策をしているから大丈夫」と思っているその対策は、本当に万全でしょうか。日常を楽しみながらも、安全を過信することなく自分の身を守るために備えておきたい防犯の基礎知識を「セコム 女性の安全委員会」の仁村園子さんに聞きました。

前編 一人暮らし女性の防犯対策 日常の危険から身を守る方法 ←今回はここ
後編 一人暮らし女性 犯罪被害リスクを減らす11のポイント

犯罪件数は減っているが油断は禁物

 コロナ禍で何かと不安の多い日々ですが、泥棒やストーカー、ひったくりなど犯罪や事件がらみのニュースは後を絶ちません。最近では、男子大学生が駅で20代女性に声をかけ、カラオケ店やネットカフェで強姦する犯罪を繰り返していたという事件がニュースになりました。

 「明るい駅の近くや家にいるときでも油断は禁物。どんな時間や場所でも犯罪は起きています。常に『自分も被害に遭う可能性がある』という意識を持って、注意を払って過ごしてほしい」と仁村さんは話します。

 警察庁の統計によると、犯罪認知件数は年々減少しています。例えば、住宅侵入窃盗の認知件数を見ると、2015年(平成27年)は5万995件でしたが、2019年(令和元年)は3万3924件となっています。しかし、決して少ない数字とはいえません。

「認知件数」は被害者が届け出て警察が犯罪と認めた事件の件数。そのうち犯人が逮捕されたものが「検挙件数」としてカウントされる
「認知件数」は被害者が届け出て警察が犯罪と認めた事件の件数。そのうち犯人が逮捕されたものが「検挙件数」としてカウントされる

 「防犯カメラの増設や警察・自治体による治安向上の取り組みなどにより、犯罪件数は減少傾向にあります。しかし、相変わらず女性が狙われる犯罪は多く、コロナによる外出自粛で家にいる時間が増えたため、宅配を装った押し込み強盗などのリスクも避けられません。巣ごもり消費が増えていますが、ネット通販のフィッシング詐欺なども手口がどんどん巧妙になっています」と仁村さんは注意を促します。

 新型コロナウイルスが広がる中では、空き巣のニュースをよく見かけましたが、「営業自粛や営業時間短縮の影響で空き店舗での泥棒が増えている」という注意喚起のために空き巣を取り上げるケースも多かったようです。

 「泥棒は人がいない家に入るイメージがありますが、実は家に人がいるときに泥棒に入る『居空き(いあき)・忍び込み(※)』という犯罪も決して少なくありません」

(※)居空き:家人が昼寝や食事中に家に侵入して金品を盗むこと
忍び込み:家人が寝入った頃に家に侵入して金品を盗むこと

 住居侵入犯罪の中での割合は、

・空き巣(家に人がいないとき) 7割
・居空き・忍び込み(家に人がいるとき) 3割

 意外なことに、家に人がいるときに侵入されたケースが3割にも上るのです。空き巣なら物を盗られるだけで済みますが、居空きなどで犯人と出くわしたら傷つけられる可能性もあります。必要以上に恐れることはありませんが、こうした被害に遭わないために、できる限りの対策を講じておきましょう。