【ポイント1】迅速な判断に役立つ情報収集法

 水害で命を落とす一番の要因は、避難行動の遅れです。ニュースなどで避難を呼びかけていても、「周りが逃げていないから大丈夫だろう」「大雨の中、一人で避難所まで行くのは不安……」と判断を誤り逃げ遅れてしまうケースがあります。周囲の人の動きを見て自分の行動を決めると、判断が遅れて被災してしまうことがあるので、迅速で的確な判断が重要です。

 自分の判断を信じて即行動に移すためには、確かな情報を見極めることが命。災害時にはたくさんのフェイク情報も流れるので、自分の中で情報を日ごろからアップデートして正しい情報を入手する習慣を身に付けておくと安心です。高橋さん推薦のアプリやSNSなどの情報源を紹介します。

●「NHKニュース・防災」アプリ

 全国の地震、台風、大雨、竜巻、警報・注意報や避難情報などの情報が随時更新される。住んでいる地点の登録やアラートの設定もできるため、いざというときに早い段階で情報を得られ、避難などの判断にも役立つ。地図のコンテンツではハザードマップ(土砂災害や洪水)、雨雲データマップ、河川情報などがリアルタイムで更新され、大雨のときにも役立つ。地図の中には河川の想定最大規模の降雨による浸水想定区域情報もあるので、会社や自宅などの水害リスクもチェックを。

写真左から、「今の天気」「土砂災害」「洪水ハザードマップ」。災害情報やNHKニュースも同時提供でアプリから見られる
写真左から、「今の天気」「土砂災害」「洪水ハザードマップ」。災害情報やNHKニュースも同時提供でアプリから見られる

●「地盤サポートマップ」アプリ

 地盤調査などを行う会社が提供しているアプリ。地点を登録すると「地震時の揺れやすさ」「液状化の可能性」「浸水の可能性」「土砂災害の可能性」などが見られるので、住んでいる場所や職場、実家などの状況を確認しておこう。全国の情報が入っていて、最寄り駅の平均乗降客数や医療施設、都市公園、小中学校区などの情報も記載されているので、転居を考えているときの引っ越し先地域や具体的な家探しにも役立つ。

日経doors編集部のある神谷町駅周辺を検索。浸水の可能性や地震時の揺れやすさ、液状化の可能性、土砂災害の可能性が書かれている。地質図も住んでいるエリアの起伏が視覚的に確認可能
日経doors編集部のある神谷町駅周辺を検索。浸水の可能性や地震時の揺れやすさ、液状化の可能性、土砂災害の可能性が書かれている。地質図も住んでいるエリアの起伏が視覚的に確認可能

●国土交通省や自治体のハザードマップ

 上記のようなアプリで日ごろから情報を入手しつつ、さらに詳しい正確な情報を確認するには国土交通省の「重ねるハザードマップ」や各自治体が発行している「ハザードマップ」を使うのがおすすめ。

●行政が発信するツイッター

 災害時、SNS上で大量のフェイク情報があふれる中、行政は正しい情報を届け続けようとする。市区町村の多くは公式ツイッターを持っており、過去の災害でも、地域の避難所、水や食料の配布、自衛隊による風呂の提供、各種行政手続き情報といった地域密着の貴重な情報を発信していた。また、首相官邸(災害・危機管理情報)のツイッターは、自ら発信するだけでなく、各省庁の災害に関する情報のリツイートをしており、必要な情報を網羅的に得ることができる。こうした行政のフォローをしておくと、いざというときに生活を守ってくれる。

高橋さんが仲間とともに立ち上げ、地域防災力アップに取り組む「江戸川みんなの防災プロジェクト」では、防災マンガ『どうする?水害から命を守る行動』(発行・江戸川みんなの防災プロジェクト/(C)エムラヤスコ)を制作
高橋さんが仲間とともに立ち上げ、地域防災力アップに取り組む「江戸川みんなの防災プロジェクト」では、防災マンガ『どうする?水害から命を守る行動』(発行・江戸川みんなの防災プロジェクト/(C)エムラヤスコ)を制作

 とはいえ、行政のツイッターはやや味気ない部分も。高橋さんの個人的な「推し」は気象庁研究官・荒木健太郎さんのツイッター。

 「気象庁気象研究所研究官で雲研究者の荒木さんは、防災・減災のために、気象災害をもたらす雲の仕組みを研究し、映画『天気の子』の監修もしています。荒木さんのツイッター上では、美しい空や雲、月などの写真投稿が見られます。思わず見とれる美しい夕焼けや雪の結晶などの写真が満載であるとともに、大雨の前などには『この雲、やばい』といったツイートも見られ、情報キャッチに役立ちますよ」