東日本大震災から間もなく10年という節目を前に、改めて地震の恐ろしさや防災対策の必要性を感じている人も多いでしょう。緊急時にはとっさの判断と素早い行動が必要。「日常の延長線上」で防災対策に取り組むことが大切です。国内外で被災地支援に20年以上携わってきた防災士の高橋聖子さんに、働く女性が知っておきたい地震対策や、発災後の在宅避難や避難所生活での注意点など最新の災害対策情報を聞きました。

【2021年働く女性の防災対策】
上 災害から命を守る 一人暮らし女性の防災対策・水害編
 女性視点の地震対策 日常の備えと生活の工夫・自宅編 ←今回はここ
下 自宅外での地震対策 避難先で過ごすときの注意点

在宅避難も想定した部屋づくりを

 今年2月に福島県沖で発生した最大震度6強の地震が、「東日本大震災の余震」と聞いて驚いた人も多いでしょう。この先10年は余震が続く可能性があるともいわれており、さらに「首都直下型地震」「南海トラフ」のリスクも長年懸念されています。地震大国である日本では、どのエリアに住んでいても地震の被害に遭う可能性があります。

 もし地震で被災したら「避難所に行けば何とかなる」と考えている人もいるかもしれません。でも、「大規模な地震後に家が住める状態であるなら、多くの場合、避難生活は自宅で過ごすことになる」と、国内外で被災地支援に20年以上携わってきた防災士の高橋さんは言います。

 「避難訓練などで、『地震が起きたら机の下に隠れる』『グラッときたら火の始末をする』『ドアを開ける、外に出る』などと教わった人は多いはずです。でも、大きな揺れが一気にくる直下型地震の場合、机の下にもぐったり、火を消したりしている余裕はおそらくありません。2016年の熊本地震のとき、熊本市に住む友人は『いきなり下から突き上げられたようだった。机の下に潜り込む余裕はなかった』と話していました」

 「人口の多い都市部や被害が大きいときなどは、家が全壊・全焼した人などで避難所の定員がいっぱいになってしまうことがあります。一人暮らし女性の場合は不特定多数の人が寝泊まりする避難所より、多少の不便はあっても家で過ごしたほうが安心という場合も少なからずあります。震災後は重傷者が大勢いて、ケガをしても医師にすぐには診てもらえない可能性も。地震が起きたときはもちろん、在宅スタイルの避難生活に備えて、家の中を安全な場所にしておきましょう」

 「非常食などの防災グッズを準備していても、いざというときに『消費期限が過ぎていた』『電池が切れていた』『使い方が分からず困った』というケースも少なくありません。制約がある環境下でもできるだけ日常に近い状態を維持できるように、日常を『防災仕様』にしておくことが大切です」と高橋さん。

 緊急時に的確な判断と行動をするためにも、大規模地震に備えた地震対策の基本を改めて確認し、防災の準備をバージョンアップしておきたいもの。次のページから、日常を「防災仕様」にするポイントを高橋さんに教えてもらいました。