眠れなかったときは日中に負荷をかける

 その日の体調や忙しさなどによって睡眠は乱れるのが普通なので、眠れなくても一喜一憂せず、1週間の平均睡眠時間が一定以上なら問題ありません。前夜にうまく眠れず睡眠不足になっていると日中にだるくなったり眠くなったりするかもしれませんが、岡島さんはそんな時でも「いつも通りか、少し負荷がかかる生活」を勧めます。「眠気を昼寝で解消したり横になって過ごしたりすると、その日もまた眠れなくなる可能性があります。眠気に襲われたら立って仕事をして体を動かし、習慣的に仮眠をとっているならそれを止めてみましょう。眠りと反対の活動をして切り抜けると、その日は寝付きやすくなります」。体に負荷をかけることで眠気をたくさん蓄えれば、その夜は自然に眠れる環境が整うというわけです。

 また、自室で仕事をしていると、座りっぱなしでほとんど体力を使わない人もいるでしょう。良い眠りを導くためには体を動かすのもおすすめです。「眠りやすい体を作るには、日中に『中強度』の身体活動を行うといいでしょう。呼吸が速くなり心拍数が増えて体温が上昇するくらいの運動が効果的なので、動画を見ながら踊ったり掃除したりするのも一案です。1回につき10分以上、少し汗ばむくらい体を動かしてみてください」(岡島さん)

まとめ
●「睡眠欲求」を高める日中の過ごし方

□起床から2時間以内に明るい光を目から採り入れる(できれば5000ルクス以上)

□寝不足のときは日中極力体を起こし、仮眠を避けるなどあえて体に負荷をかける

□仮眠(昼寝)は14時までに20分以内で済ませる

□体内時計・睡眠リズムを整えるために決まった時間に食事を取る

□少し汗ばむくらいの運動をする

 いかがでしたか? 前編では眠くなる仕組みや眠りを誘う基本的な生活リズムについて紹介しました。あまり眠れなくて日中の仕事や活動に差し支えるのはつらいので、「起きたら目から光を入れる」「寝不足の日はあえて体に負荷をかける」など、できそうなこと1つだけでもさっそく始めてみてください。後編では夕方以降にできる、眠るためのカラダづくりを紹介します。

監修: 東京家政大学  人文学部心理カウンセリング学科准教授
睡眠行動科学研究室 岡島義(おかじま・いさ)さん

日本大学文理学部心理学科卒業。北海道医療大学大学院心理科学研究科博士課程修了(博士〔臨床心理学〕)。公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター研究員、東京医科大学睡眠学講座兼任助教、医療法人社団絹和会睡眠総合ケアクリニック代々木 主任心理士、早稲田大学人間科学学術院助教などを経て2018年より現職。

取材・文/加納美紀 イメージ写真/PIXTA