日本のジェンダーギャップ指数の結果に毎年落胆し、日常で目の前に感じている小さな男女格差にも気持ちが沈みがちになる一方で、「女性であること」をポジティブに表現したり、新しい事業につなげたりしながら、積極的で新しい価値観をつくり出している人やプロジェクト、プロダクトは、どんどん増えている。「私たちは、女性であることに、もっとポジティブになっていい」――そんな思いで立ち上げた連載「ポジティブフェム」。第1回に登場するのは、独立系ベンチャーキャピタルANRI(東京・渋谷)のシニアアソシエイト、江原ニーナさんだ。

前編 江原ニーナ スタートアップ界でのジェンダー格差に挑む ←今回はここ
後編 江原ニーナ「投資先の2割を女性起業家に」が目標

 大学在学中、インターンシップとして関わり始めたベンチャーキャピタルANRIで正社員として登用され、取材当時(2021年2月)は、現役大学生と会社員と2つの顔を持っていた江原ニーナさん。

ベンチャーキャピタルANRIで最年少キャピタリストとして働く江原ニーナさん
ベンチャーキャピタルANRIで最年少キャピタリストとして働く江原ニーナさん

 江原さんは、ANRIが昨年11月に発表した「250億円規模を運用する4号ファンドの投資先社数のうち、女性が代表を務める企業の割合を2割に引き上げる方針」の発起人でもある。起業家も投資家側も、男性中心になりがちなスタートアップの世界で、日々、ジェンダーギャップ是正に取り組んでいる24歳だ。

 少数精鋭のベンチャーキャピタルでシード投資(創業初期の起業家への投資)と聞くと、強くて意識高めのスーパーエリートを思い浮かべる人も多いだろう。だが、実物の江原さんは、明るい笑顔が印象的な、とても柔らかい印象の女性だった。

 「意識が高いなんて自分では思ったことがないですね。むしろ、その時々でやりたいことをやってきたので、あまり一貫性のない人生なんですよ(笑)。卒業してそのままANRIで働こうと決めていたわけではないので就職活動もしました。ところが、一貫性がないあまりに、自分の強みをアピールするのに苦戦し、途中で挫折してしまったんです」

フェミニズムを教えてくれた、男女2人の先生

 中学卒業までは熊本市で育ち、高校からは父親の仕事の都合で米国ノースカロライナ州に引っ越し、現地校に通った。そこでは、フェミニズムやジェンダーなど、江原さんの人生に大きく影響するイシューとの出合いが待ち受けていた。

 「女性らしさ、男性らしさに苦しめられているのは女性だけじゃない、フェミニズムとは、女性の権利を叫ぶだけのものではなくて、男性のためのものでもあるんだと教えてくれたのは、自身もフェミニストである男性の先生でした。目の前が開けたような、そんな感覚がありました」