「女性であること」をポジティブに表現したり、新しい事業につなげたりしながら、積極的で新しい価値観をつくり出している人やプロジェクト、プロダクトは、どんどん増えている。「私たちは、女性であることに、もっとポジティブになっていい」――そんな思いで立ち上げた連載「ポジティブフェム」。第1回に登場するのは、独立系ベンチャーキャピタルANRI(東京・渋谷)のシニアアソシエイト、江原ニーナさんだ。

前編 「江原ニーナ スタートアップ界でのジェンダー格差に挑む」
後編 「江原ニーナ『投資先の2割を女性起業家に』が目標」 ←今回はここ

 独立系ベンチャーキャピタルANRIでシニアアソシエイトとして活躍する江原ニーナさん。2020年11月にANRIが発表した「4号ファンドの投資先において起業家が女性である企業の比率を最低でも20%に引き上げる」という投資方針は、江原さんが中心となって動き出したポジティブアクションだ。

起業家とのイベント写真「なんかおかしい」

 毎年、ANRIのメンバーと付き合いのある起業家で行っている新年会の写真を何気なく見返したとき、江原さんはあることに気づいた。「総勢80名くらいいる中で、女性はたった4人しかいない……」と。

 「ANRIに参画した1年目は、キャピタリストの仕事について何も分からない状態でした。インプットすることがたくさんありすぎて、正直、それ以外に気が回らなかった。余裕がなかったんですよね。でも、ふと、落ち着いて見回すと、自分のいる業界が男性ばかりということに違和感を抱いたんです」

「これは変だぞ、このままではまずいんじゃないか、と。強い危機感もありました」
「これは変だぞ、このままではまずいんじゃないか、と。強い危機感もありました」

 その後、何気ない雑談の中で、ANRI代表の佐俣アンリさんも「今後、ファンドの方向性を考える上でダイバーシティを念頭に置く必要がある」と話し、共通認識を持っていることを江原さんは確信する。

 そこから、江原さんは個人的に動き始めた。ブログサービス「note」で定期的に、自分の仕事やジェンダーについて発信した。また、女性の起業家や女性をターゲットとしたプロダクトやサービスを作っている企業を対象とした相談会「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)オフィスアワー(相談会)」を開催し、他社の女性キャピタリストも巻き込みながら、ジェンダーに関する視点を有するキャピタリストとして、活動の幅を広げていった

 「私はまだ経験値の少ない、若手です。私から提供できるものは、正直あまりないんです……。だから、他社の女性キャピタリストに『一緒にやりませんか』とコンタクトを取るのは、結構ハードルが高かったですね(笑)」