日本のジェンダーギャップ指数の結果に毎年落胆し、日常で目の前に感じている小さな男女格差にも気持ちが沈みがちになる一方で、「女性であること」をポジティブに表現したり、新しい事業につなげたりしながら、積極的で新しい価値観をつくり出している人やプロジェクト、プロダクトは、どんどん増えている。「私たちは、女性であることに、もっとポジティブになっていい」――そんな思いで立ち上げた連載「ポジティブフェム」。第3回では、高性能吸水ショーツ「PlayS(プレイショーツ)」を開発した、テレビディレクターで番組制作会社代表の坂上大介さんに話を聞いた。

前編 「生理を経験できない」私が開発した機能性吸水ショーツ ←今回はここ
後編 吸水ショーツ開発 「生理の話」で見えた景色と目標

専門外なのに、なぜ開発することになったのか

 「生理中のナプキン交換が面倒」「漏れないか不安」「タンポンは苦手」など、生理中に何かと不快感を覚える女性は多い。近年では、こうした悩みを軽減し、生理期間を少しでも快適に過ごすための製品が数多く登場。月経カップやオーガニックコットン製のナプキン、吸水ショーツをはじめ、生理中に使うアイテムの選択肢は広がりつつある。

 その中で、今年4月に開始したクラウドファンディング(現在は終了)を経て、一般販売に至ったのが高性能吸水ショーツ「PlayS(プレイショーツ)」だ。吸水ショーツ分野では後発のアイテムだが、TikTokで公開した吸水性の実証実験動画は85万回(2021年7月1日現在)の再生を記録するなど、大きな注目を集めた

 「『PlayS』は、アスリートが試合中に使える品質を目指した」と話すのは、開発者の坂上大介さんだ。

「『PlayS』の開発は本業の合間に取り組みました。プロジェクトとしては、基本1人で進めました」
「『PlayS』の開発は本業の合間に取り組みました。プロジェクトとしては、基本1人で進めました」

 テレビディレクターで番組制作会社を経営し、アパレルもフェムテックも専門外の坂上さんがなぜ、高性能吸水ショーツを開発することになったのか。最初のきっかけは、取材を通じて知った女性アスリートや自社の女性スタッフから、生理中の苦労や悩みを聞いたことだった。

 「最初は特に意識をしていなかったのですが、結果的に、自分が男性だからこそ、シンプルな製品が作れたと思っています」

漏れない、ズレない、ユニホームから出ない、プレーの邪魔にならない。トップアスリートと開発した「PlayS」
漏れない、ズレない、ユニホームから出ない、プレーの邪魔にならない。トップアスリートと開発した「PlayS」

生理の「不便さ」を少しでも解消したい

 「誤解のないように言うと、開発にあたって『ビジネスとして魅力があるから、フェムテックに参入しよう』といった考えはなかったんです。ただただ、生理に悩んでいるアスリートや周りの女性たちの力になりたかった。彼女たちから、生理に関する本音や体験談、意見を聞くうちに、『少しでもいいから、この不便さを解消することはできないか』と強く思うようになったんです」

 とはいえ、生理について、女性とオープンに話せる男性は、まだ少ない。「生理を経験することのない」坂上さんが、PlaySの開発に着手した背景には、実はいくつかのきっかけとなる出来事があった。