「私たちは、女性であることに、もっとポジティブになっていい」――「女性であること」をポジティブに表現したり、新しい事業につなげたりしながら、積極的で新しい価値観をつくり出している人やプロジェクト、プロダクトは、どんどん増えている。今回は、高性能吸水ショーツ「PlayS(プレイショーツ)」を開発した、テレビディレクターで番組制作会社代表の坂上大介さんに話を聞いた(下編)。

前編 「生理を経験できない」私が開発した機能性吸水ショーツ
後編 吸水ショーツ開発 「生理の話」で見えた景色と目標 ←今回はここ

 体の動きにフィットし、運動中も経血が漏れにくい機能を追求した高性能吸水ショーツ「PlayS(プレイショーツ)」を開発した坂上大介さん。下編では、制作過程で特に重視した点や男性である自分が吸水ショーツ開発を通じて感じたことを語ってくれた。

「こだわり」がないからこそできた「PlayS」

 番組制作会社を経営する傍ら、吸水ショーツの開発を進めた坂上さん。実際に生産してもらえるかどうかOEM(受託製造)メーカーを30社近くあたった末にやっと1社決まり、すぐに試作に取り掛かった。

 このOEM企業には女性スタッフが多く、坂上さんの依頼をポジティブに捉え、協力する姿勢を見せてくれた。メーカーの担当者に提案された医療用素材の繊維を使ったパッドを重ねると、吸水性が格段にアップ。さらに防水布の組み合わせなどを工夫したところ、しっかり漏れを防止できると期待できる仕上がりになった。

 ショーツ全体とクロッチ(股布)部分の素材の組み合わせには苦労したが、試作を初めてから約6カ月、業界では異例の速さで希望通りの製品を完成させることができた。

 「これだけの速さで制作できたのは、私自身には生理がないからです」と坂上さんは言う。「ニーズに合わせて、とにかく機能性だけを追求できたことが開発スピードにつながったんだと思います」

「もし、自分に生理があったら感情移入して、スピード感を持って進行できなかったかもしれません」
「もし、自分に生理があったら感情移入して、スピード感を持って進行できなかったかもしれません」

 「デザインもフィット感を重視し、極力シンプルにしました。もし、私が女性だったら、かわいいデザインにしたいとか、就寝時も使えるようにしたいとか、自らが使うからこそ、いろいろなこだわりが生まれ、開発期間が長くなっていたかもしれない。でも、PlaySは、『スポーツ用』という明確なコンセプトがあり、昼間の運動時の漏れ防止だけを目指したため、意思決定の回数が少なかったんです」

「『PlayS』は約20ミリリットルの吸水性があります。これは一般的なナプキン3、4枚に相当します」
「『PlayS』は約20ミリリットルの吸水性があります。これは一般的なナプキン3、4枚に相当します」