「個」の課題から共感が生まれる

 セクシュアルウェルネスアイテムのほか、不妊の悩みをサポートするアイテムも取り扱う。医療機器の一つである「ファーティリリーカップ」などは、妊活を視野に入れている女性たちから注目を集めている。

 「ファーティリリーカップは、子宮の入り口での精液保持を目的としています。性交渉後の精液の流出を低減するもので、妊活の初期段階の方から、広く手軽にご使用いただけます。開発者は、長年パートナーと妊活に取り組んでいた男性。同じように妊活に悩むカップルをサポートしたいと考えたことが開発のきっかけだったそうです」

「現在登場しているフェムテック製品の多くは『個』の課題から生まれていると感じます」
「現在登場しているフェムテック製品の多くは『個』の課題から生まれていると感じます」

 生理にまつわるアイテムに加え、セクシュアルウェルネスや妊活サポートなど、ますます進化を遂げるフェムテック製品。中村さんは、「こうしたフェムテックアイテムのほとんどは、『個』の課題から生まれている。それが共感を集め、同じような悩みを持つ人に届けられていくのです」と話す。

 「2019年の創業前に、市場調査の意図もあり、試験的に『Femtech Fes!』を開催しました。このときは、『フェムテック』という言葉も浸透していなかったですし、みんな興味あるのかな? と思っていました。共同創業者のAminaと、フェムテックはきっとニーズがあると確信していましたが、どれくらいの人が関心を持ってくれるのか未知数でした。ところが、イベント当日は100人以上の参加があり、『待っていました!』と、ポジティブな声をたくさん掛けてくれたんです。このときに、多くの生物学的女性が、生理をはじめとした自分の心身に起こることについて、さまざまな選択肢を求めていたんだと実感しました」

 イベント開催により、女性たちのニーズをつかんだ中村さんとAminaさんは、fermataを創業し、フェムテック市場に参入。しかし、事業を進める中で日本のフェムテック産業におけるさまざまな課題が見えてきた。

 後編「fermata中村寛子 フェムテック流行語にしたくない」へ続く

取材・文/高橋奈巳(日経xwoman doors) 写真/小野さやか

下編「fermata中村寛子 フェムテック流行語にしたくない」では、次のストーリーを展開

■日本におけるフェムテック産業の課題
■生理痛や不調があっても、「当たり前」はおかしい
■近い将来、『フェムテック』という言葉がなくなればいい
■ポジティブフェムのために、私たちが今できること