ビジネス感覚を身に付け、起業に興味

 歌手デビュー後、レコード会社を移籍しつつ、シンガーソングライターとして活動していた信近さんは、あるとき飲食店プロデュースの依頼を受けた。日ごろから「こんなお店があったらいいのに」と話していたことが関係者の耳に入り、オファーが来たのだ。

 プロデュースを任されたのは、期間限定のインバウンド向け飲食店。「SNSに映えるお店」を意識しながら、コンセプト出し、内装デザイン、メニュー開発、マーケティング戦略の立案まで、すべて信近さんが担当した。

 「私にとって、ゼロからビジネスとして何かをつくるのは初めての経験。それまで作詞・作曲も行っていましたが、音楽はさまざまな専門家やスタッフとつくり上げていきますし、アーティスト活動なのであまり仕事といった感覚がなかったんです。でも、このプロジェクトでは、自分が中心となってスタッフに動いてもらい、全体を見ながら進めることで、『仕事』としての意識が高まりました。実践を通じてビジネスを学んでいきましたが、頭の中に描いていたことが形になっていくのがすごく楽しかった

「SNSなどでバズっている投稿を見たときは、なぜ人気なのかを考え、分析します。どういうときに注目されて、どこで大きな反応が来たのかなど、SNSで拡散される仕組みを自分なりに理解して、飲食店のプロジェクトに役立てました」
「SNSなどでバズっている投稿を見たときは、なぜ人気なのかを考え、分析します。どういうときに注目されて、どこで大きな反応が来たのかなど、SNSで拡散される仕組みを自分なりに理解して、飲食店のプロジェクトに役立てました」

 オープン後、お店は連日盛況で、SNSでも大きな話題を呼び、海外進出も果たした。この経験からビジネスの面白さを知った信近さんは、以降、世の中をビジネス的な視点で俯瞰(ふかん)するようになった。そこで、気づいたのがフェムテック分野の課題だった。