日本のジェンダーギャップ指数の結果に毎年落胆し、日常で目の前に感じている小さな男女格差にも気持ちが沈みがちになる一方で、「女性であること」をポジティブに表現したり、新しい事業につなげたりしながら、積極的で新しい価値観をつくり出している人やプロジェクト、プロダクトは、どんどん増えている。「私たちは、女性であることに、もっとポジティブになっていい」――そんな思いで始めた連載「ポジティブフェム」。第5回はフェムテックブランド「Rine(リネ)」を立ち上げた信近エリさんに話を聞いた。

前編 信近エリ 歌手→フェムテック企業設立 理想の商品追求
後編 信近エリ 職業バイアス乗り越え5000万円の資金調達 ←今回はここ

資金調達に奔走中、ジェンダーギャップを感じた

 フェムテック企業のNeith(以下、ネイト)を設立し、2021年6月にフェムテックブランド「Rine(以下、リネ)」を立ち上げた信近エリさん。主力製品である吸水ショーツや吸水ブラレット(母乳の漏れを吸水するノンワイヤーブラジャー)は、ブランド立ち上げから商品の欠品が相次ぐなど、業界内外から大きな注目を集めている。

 自分の理想とする吸水ショーツを開発するため、法人を設立し、資金調達に着手した信近さんは「思ったよりも順調に進んだ」と話す。しかし、資金調達の過程でジェンダーギャップを感じることもあり、心が痛んだこともあった。

 「私がプレゼンした投資家の人たちは男性が多かったため、まず、生理の仕組みから説明する必要がありました。その上でナプキンとは何か、なぜ吸水ショーツが必要なのか、市場のニーズはどれくらいあるのかなど、細かく伝えました。体の仕組みが違うので、どうすれば自分に置き換えて考えてもらえるかを重視して、自分の体験を交えながら丁寧に説明していったんです。それでも、『女性用品は分からないからごめんなさい』とはっきり断られたこともあります。

 資金調達が進んでいるとき、ある会食の席で、初対面の男性からいきなりハラスメントに当たる発言を受け、憤りを感じました。女性の起業や資金調達には、まだまだバイアスをかけて見ている人もいるのだと思い、残念な気持ちになりました。『元歌手だからコネクションがあったのでは?』と言われたこともありますが、それもバイアスのかかった視点。そんなことは全くなくて、投資家や生産工場を探すのも一つひとつドアノックで探して回ったんです」

 時には不快な思いもしたが、信近さんの熱意は多くの投資家に伝わり、最終的に5000万円の資金調達に成功した。

「投資家に向けて作成した最初のプレゼン資料は、『これは事業計画書ではなくて、企画書だよ』と言われてしまったことも。そこからビジネスにおける数字についても学び直しました」
「投資家に向けて作成した最初のプレゼン資料は、『これは事業計画書ではなくて、企画書だよ』と言われてしまったことも。そこからビジネスにおける数字についても学び直しました」