メンタルケアが必要な人により広くアプローチできる手法の1つとして、SNSを活用した情報発信に力を入れる臨床心理士のみたらし加奈さん。私生活では、同性パートナーである美樹さんと過ごす等身大の暮らしを発信するYouTubeチャンネルを開設。登録者数は4万7000人に上ります(2021年4月末時点)。今回は、同性パートナーとの出会いを通じて解放されたジェンダーロールへの考えについて聞きました。

偏見の芽は無意識の中にある

 前回の「みたらし加奈 心の居場所をSNS発信に求めた私の原点」では「自分の価値観やステレオタイプを人に押し付けない」ことを大切にしているとお話ししました。人に対しても物事に対してもできるだけニュートラルでありたいと、普段から心掛けています。そんな私も、もともとはどちらかというと偏見が強いタイプで、男はこうあるべきだ、女はこうあるべきだという保守的な性別役割分担意識を強く持っていました。

 女性には「賞味期限」があって、誰かに愛される愛嬌(あいきょう)を手に入れるためには、「相手の話は笑顔で聞く」「守りたい存在になる」「嫌なことがあっても顔に出さない」「出しゃばり過ぎず、多くを語らない」といったことが必要だと信じていました。「女として終わる前に」と何か生き急いでいたけれど、何のためなのか結局分からず、社会に居心地の悪さを感じながらも、「常識」みたいなものの多くを信じて疑いませんでした。だからこそ、常識の鎧(よろい)を脱いだ時には、「これは違う」「これはおかしい」とニュートラルな視点に変わりやすかったと思います。

 今の自分に全く偏見がないかといわれると、そんなことはないと考えています。偏見の芽は無意識の中にあるのだと思います。大切なのは、今ある自分の価値観がすべてではないと知ることと、「何をアウトプットして、何をアウトプットしないか」の精査をすること。だからこそ、常に自分自身と対話した上でアウトプットするための、よりよい方法を考え続けています。

臨床心理士のみたらし加奈さん
臨床心理士のみたらし加奈さん