メンタルケアが必要な人により広くアプローチできる手法の一つとして、SNSを活用した情報発信に力を入れる臨床心理士のみたらし加奈さん。今回のテーマは、コロナ禍において大きな変化が生じている対人コミュニケーション。自己肯定感が下がったときの対処法についても聞いていきます。

 日ごろの活動をしている中で、相談を受けることも多い自己肯定感や対人関係の悩み。doors世代の皆さんの中にも、「優秀な人や仕事のデキる人を近くで見ると、劣等感を持ってしまう」「自己肯定感が低く、人間関係をうまく保てない」と悩んでいる人がいると聞きました。

 人間関係において、その価値を「自分のほうが低い」「相手のほうが高い」などと感じてしまうとき、そこには「不均等な関係性」が生まれている可能性があります。

 私自身も子どもの頃、上下関係の抑圧を感じたことがあります。当時の私は気の弱そうな見た目とおとなしい性格から、いじりの延長のような形で同級生から嫌がらせを受けた時期がありました。私の場合、家族の都合で幼稚園を転園し、小学校も1度転校をしているのですが、既にできあがっているコミュニティに加わり、教室のパワーバランスを察しながらなじんでいかなければなりませんでした。しかし、そうでなければ「異質なもの」として扱われてしまう気がして、「嫌だな」と思いながらも、黙って受け入れていました。

 同級生との関係性がだんだんと悪化していく中で、ある日私のメガネが同級生に蹴飛ばされ、壊れてしまったことがありました。床に落ちたメガネを見て、「私、このままずっとヘラヘラと笑っていたら、一生攻撃し続けられちゃうのかな」と、我に返るような気持ちになりました。おそらくその時、初めて「不均等な関係性」の存在を自覚したんです。

臨床心理士のみたらし加奈さん。子どもの頃、人間関係のパワーバランスに何度も巻き込まれた中で、「コミュニケーションには対等な関係が必要」と気づいた
臨床心理士のみたらし加奈さん。子どもの頃、人間関係のパワーバランスに何度も巻き込まれた中で、「コミュニケーションには対等な関係が必要」と気づいた