政治家の人格よりも注目していること

 誰に投票したらいいか分からず、自分の感覚とは違う人に投票するということもあるでしょう。私も迷うときがあります。そういう経験も含めて徐々に関心が深まり、自分なりの選ぶポイントも磨かれていくものだと思います。

 投票をするときに私がもっとも重視している点は、プライベートや人格の部分というよりも、「その人がどんな仕事をしてきた(いる)のか」という施策と実行力の部分です。もちろん犯罪やあまりに倫理観が欠如している言動はとがめられるべきですが、政治家は聖人君子ではなく、長所・短所のある一人の人間でもあると個人的には思っています。

 メディアに切り取られた断片的な情報だけではなく、自分の目で「政治家としてどのような仕事をしたのか」を確認するために、選挙WEB(NHK)の候補者アンケート、国会議員白書、自治体の立候補者が発信しているブログやSNSなどを参考に、過去の活動や実績を自分のできる範囲で情報収集をして、フラットな視点から総合的に判断するように心掛けています。

 任期中の活動や実績を明示することは、政治家本人にとっても有権者にとっても重要で有意義なこと。実績や公約の達成度などを整理して客観的に確認できるような第三者機関による情報発信の仕組みができると、もっと政治に対する分かりやすさや期待、「自分の1票が前向きな動きにつながった」という成功体験が生まれていく気がします。

政治の話題は、身近なところからでいい

 身近な人たちと、もっと気軽に政治について話せる関係が増えていくとすてきですよね。

 「最近、食品の値上がりが多くない?」という会話から、円安と政治情勢について話したり、「年金、本当にもらえるか不安だよね」という話題から年金制度に興味を持ったり。私だったら「パートナーと結婚したいんだけど、日本の法律で同性婚は認められていないからなぁ」など、自分の日常生活に落とし込んだ話題からでいいと思います。急に踏み込んだ話をしづらいという人は、SNSなどで気になるニュースをシェアすることで、関心があることを周囲に匂わせていくのもいいかもしれません。

 政治の話題は、特に若年層は「分からないことが恥ずかしい」「言い負かされそうで関われない」という人もいると思いますが、「分からないことは恥ずかしいことじゃない」と声を大にして言いたい。知識の有無で「発言していいかどうか」が判断されることは絶対にないと私は思いますし、もしもそのような環境に身を置いているのであれば、あまりヘルシーではないですよね。私自身、政治に関心はあっても分からないことはたくさんありますし、「もっと分かりやすく言ってほしい!」って思うこともあります(笑)。

 知的好奇心を持って「これってどういうことだろう?」って聞くことができる人がいれば、周りも意外と「え? 私も分からない。ちょっと調べてみようか」となるかもしれません。お話している相手と一緒に分からないことを共有して、一緒に学んでいってもいいんです。一人では理解できなかったことも、誰かと話すことで理解できたり、新しい知見を得られたりする場面もあるかもしれない。だからこそ、政治という大きなものをできるだけ日常の中に落とし込みながらハードルを下げ、お互いの考えの違いを受け入れながら、オープンな信頼関係のもとで気軽に話し合えるような風潮が生まれていくといいなと思っています。

取材・文/中西須瑞化 取材・構成/加藤京子(日経xwoman doors) 写真/鈴木愛子