世の中は、私たちの世代から変えていく

 数年前まで 「ミレニアル世代」 という言葉がやたら聞かれたが、今はそうでもなくなった。今話題によくあがるのは、1990年代半ば以降に生まれた 「Z世代」 だ。

 Z世代が世界で注目されるには理由がある。単純に人数が多いのだ。2019年の統計によると、世界人口の約32%がZ世代になるという。経済的に考えれば、今後最も考慮すべき顧客になる世代というわけである。人数が多い世代は優遇されるという事実を、日本を生きる若い世代は選挙やいろんな側面で嫌というほど知っている。

 日本においても、Z世代は未来の消費者として大変重要だ。さまざまな番組で「Z世代のトレンド」が紹介されるし、若者の意見を語るゲストがニュース番組に出るのも度々見かける。しかし、ミレニアル世代が話題にされなくなり、「もう若者ではないから」と、トレンドの代表として主張しなくなるのはもったいないと思うのは私だけだろうか。

 そして、ミレニアル世代として生きる個人も、「もう新しい価値観を発信する立場ではないから」と考えてしまうのももったいないと思う。なぜなら、私たちこそ、断絶する過去と未来に橋を架けることができる世代だと思うから。

 インターネットのない時代とインターネットがインフラになった時代の両方を知っているから語れることがある。変わる前の価値観と変わりゆく価値観の両方に触れているから感じることがある。時代が変わる過渡期の時代に生きているからこそ感じる、覚えておきたい感情がある。

 そして、時代の継ぎ目を生きているからこそ、少しでもより良い未来にバトンを渡したいという思いがある。その実現に加担できるくらいには、十分社会の一員として、ある程度の役割を担うようになった。

 変わりゆく時代に、結婚したり子供を産んだり職場で責任を持ったりする――変わっていく社会制度の影響をもろに受ける当事者である「大人」として生きているからこそ。会社でも社会でも、バリバリ主役を張って生きている私たちだからこそ。

 今の時代を学生や若手社会人など「若者」として生きるZ世代よりも、変わりゆく時代に生きる苦しみを叫び、世の中が少しでもより良い方向に向かうよう、先陣きって未来の手綱を正しい方に引っ張らなければならないと思うのだ。

 世の中は、私たちの世代から変えていく。

 ミレニアル世代はもがいている。だけど、私たちがもがいていることには意味がある。だから、もがいていることを正直に書き残していくのだ。世の中の風向きを、次なる世代の背中を――いや、私たちと同じ世代を生きる友人たちの、一生懸命な背中でさえも、押してくれる追い風へと変えられるように。

「桜も紅葉も好きだけど、新緑の季節が好きです。代々木公園にて」
「桜も紅葉も好きだけど、新緑の季節が好きです。代々木公園にて」

文/りょかち 写真/本人撮影