2019年5月1日に日本での活動を開始した「30%クラブ・ジャパン」。企業の取締役会メンバーなど役員に占める女性の割合を30%に上げるという目標を掲げ、資生堂社長兼CEOの魚谷雅彦さんなど58人(2020年8月6日現在)の企業トップが集まり、活動しています。創設者である只松美智子さんは「ダイバーシティの本質的な課題は『日本がこの先、生き抜いていけるか』という話だ」と警鐘を鳴らします。

ジェンダー格差は「日本の生き残り」に直結する問題

「女性を含むすべての人が安心して活躍できる土台をつくることで多くの人の英知を結集し、イノベーションを創造し、競争力を高めていくという点において、ダイバーシティがこれまで以上に必要になってきています」(「30%クラブ・ジャパン」創設者・只松美智子さん)
「女性を含むすべての人が安心して活躍できる土台をつくることで多くの人の英知を結集し、イノベーションを創造し、競争力を高めていくという点において、ダイバーシティがこれまで以上に必要になってきています」(「30%クラブ・ジャパン」創設者・只松美智子さん)

日経xwoman総編集長 羽生祥子(以下、――) ジェンダー格差やダイバーシティという言葉を使った瞬間に、「CSR(企業の社会的責任)」や「人権問題」と捉えられがちです。ジェンダー平等という言葉を経営者に上手に提案するには、どうしたらいいでしょうか。

只松美智子さん(以下、只松) ダイバーシティの課題は、人権の観点からも重要ですが、現在では「日本がこの先、不透明な世界経済の中で生き抜いていけるかどうか」、つまり持続可能性という点で重要になってきています。

 超少子高齢化がとてつもないスピードで進む日本にとって、世界経済の中で競争力を高めるにはダイバーシティは不可欠です。これは決して女性を単に労働力として活用するということではなく、女性を含むすべての人が安心して活躍できる土台をつくることで多くの人の英知を結集し、イノベーションを創造し、競争力を高めていくという点において、ダイバーシティがこれまで以上に必要になってきたということです。

 このような平等でオープンな職場環境を実現できれば外国の優秀な人材も日本で働くことを選んでくれるでしょう。経営者にはこのようなダイバーシティのビジネスケースをお伝えすることが必要です。

―― そこがなかなか理解されないですよね。国連によるSDGs(持続可能な開発目標)についても、表面的な理解にとどまっていることを感じます。

只松 残念ながら日本ではSDGsの意義が正確に伝わっていないように感じます。SDGsの17の目標はそれぞれが独立した個別の目標の集まりではありません。SDGsの根底には「すべてはつながっている」という考え方があります。17の目標のうちどれかできるものに取り組めばよいということではなく、すべての目標を同時並行的に取り組んでいかなければ世界の持続可能性は向上しません。

 例えば、環境に関連する目標だけに取り組み、貧困やジェンダー平等の課題に取り組まなければ、これらの対応しない目標に引きずられて、環境の目標においても思うような効果を出せません。「ドベネックのおけ」(おけは何枚もの板を合わせて作られている。それに水をためる場合、どんなに水を入れても一番短い板のところまでしか水はたまらず、それ以上はあふれてしまうことを意味する)がまさにこの考え方を表しています。

 特にSDGsの5番目に掲げられている「ジェンダー平等」の目標は、SDGsの前文に 「ジェンダー平等の実現と女性・女児の能力強化はすべての目標とターゲットにおいて『死活的に重要』な貢献をするものである」と明言され、横断的な価値として位置付けられています。