日本IBMは100%出資子会社3社を合併し、7月1日に新会社「日本IBMデジタルサービス」を設立した。数千人というグループ最大のIT集団を率いるトップには、井上裕美さんが就任。39歳の若手女性社長誕生は、社内外から大きな期待を集めている。前回の記事「日本IBM新子会社に井上裕美氏 若手社長誕生に注目」に続き、井上さんがどうキャリアの壁を乗り越えたのか、また日本IBM社長山口明夫さんの井上新社長への期待を、日経xwoman総編集長の羽生祥子が聞いた。

(1) 日本IBM新子会社に井上裕美氏 若手社長誕生に注目
(2) 社長になり、社章を着用 「すべて自分で」をやめ成長 ←今回はココ

右から、日本IBM代表取締役社長 山口明夫さん、日本IBMデジタルサービス代表取締役社長 井上裕美さん、日経xwoman総編集長 羽生祥子
右から、日本IBM代表取締役社長 山口明夫さん、日本IBMデジタルサービス代表取締役社長 井上裕美さん、日経xwoman総編集長 羽生祥子

子育てとの両立の壁、「気張ってますよ」の助言で打破

日経xwoman総編集長 羽生祥子(以下、――) 総合的なビジネススキルが要求される官公庁向けの大型プロジェクトに携わる中で、井上さんにとってキャリアの転機や、自身の成長につながった経験は何ですか?

日本IBMデジタルサービス代表取締役社長 井上裕美さん(以下、井上) 私にとって一番大きな転機というと、出産・育児です。仕事のスタイルが大きく変わりました。2010年に第1子を出産して11年に復帰したのですが、復帰直後に官公庁デリバリー部長に就任しました。デリバリー部長というのは、プロジェクト全体を見るポジションです。

 それまではお客さまにのみ向き合う働き方でしたが、全体を見る部長となったことで、責任も仕事の幅も大きく広がりました。14年には2人目の子どもを出産し、どうしても両立が大変で、いっぱいいっぱいになることばかりでした。

日本IBMデジタルサービス代表取締役社長に就任した井上裕美さん 。二人の子どもを持つワーキングマザーとして、仕事と育児の両立に悩んだ日々も
日本IBMデジタルサービス代表取締役社長に就任した井上裕美さん 。二人の子どもを持つワーキングマザーとして、仕事と育児の両立に悩んだ日々も

―― 子育てと仕事の両立は、初産の直後は誰もが悩みますね。井上社長は、特にどのあたりに悩みましたか?

井上 もともと、私は全部自分で責任を取ってやりたい、自分が前面に出ていくことで仕事のクオリティーを上げたいと考えるタイプでした。出産前は、外から見ると自分ひとりの力で仕事にまい進しているように映っていたかもしれません。

 でも、子育てをしていると物理的にできないことがたくさんあります。夕方になるとお迎えに帰らないといけない、熱が出たら休まなくてはいけない。関わるプロジェクトが複雑になるほど、よいフェーズばかりではなく、トラブルも多くなるものです。時間的な制約で自分が前面に立てないことへの葛藤は大きかったですね。

 そんなとき、チームメンバーから「井上さん、気張ってますよ。肩に力が入っていますよ」と、忠告されました。厳しい状況に直面して、いつのまにか私自身がこわばっていたんですね。フランクにそうアドバイスしてくれたのが、すごくありがたかったです。

―― 井上社長はおっとりして見えますが、気張っている、全部自分で! などということもあるんですね。

日本IBM代表取締役社長 山口明夫さん(以下、山口) それはそうですよ。社長になるくらいですから、おっとりだけではないでしょう。力が入るとすごいパワーです。