2020年11月3日、米国大統領選挙が行われました。急きょ、たかまつななさんは取材でニューヨークとワシントンD.C.へ。20代の彼女が大統領選挙を間近で見て感じたリポートです。

 急きょ、私は米国大統領選挙の取材に行くことにした。行き先はニューヨークとワシントンD.C.。英語もあまり話せないし、過去に大統領選挙の取材経験もない。けれど、その熱気を目の当たりにしたかった。

 私は今、日本の若い世代の人たちに「選挙に行きましょう」と伝える活動をしている。それに生かしたい、と強く思った。専門家としてではなく、米国と距離のある一若者である私が感じたことを、自分の言葉でここに伝えたい。

ニューヨークは圧倒的バイデン支持

 まずはニューヨークから取材。話を聞いた地域は、圧倒的にバイデン支持だった。しかし一方で、米国全体では半分近くの人がトランプを支持しているというのだ。

 バイデン支持者に話を聞いていくと、「トランプはレイシストだ」「新型コロナへの対応がひどかった」といった声が多い。積極的にバイデン氏を支持しているのではなく、反トランプ派の人が多いから、バイデン氏に票が回っていると感じた。

ニューヨーク・タイムズスクエアにて
ニューヨーク・タイムズスクエアにて

 街ゆく人に、「なぜ、米国民の半分近くの人がトランプ氏を支持しているのでしょうか?」と尋ねてみると、「それが分かったら私も教えてほしいわ」と答える人たち。米国民の分断を垣間見た気がした。

 同じ国の中で、意見が違う人の思考を理解できない。理解する気がないのではない。理解しようとしても分からないのだ。すごく怖いことだな、と思った。

コロンビア大学の学生たち
コロンビア大学の学生たち

 取材に行ったコロンビア大学(ニューヨーク州)では、選挙の際にカウンセリングが開かれているという。2016年のアメリカ大統領選挙でトランプ大統領が選ばれた時、ショックで泣き続ける学生などがいて、心理的なケアが大変だったのだそうだ。

 日本で「自民党が勝ったから」「菅(義偉)さんが新総理になったから」といって、泣く学生はいないだろう。選挙に対する感覚や考え方の違いをかなり感じた

ホワイトハウス前にはメディアが多数集まっていた
ホワイトハウス前にはメディアが多数集まっていた

 そもそも現地の報道も、「明らかにトランプ寄りなメディア」と、「トランプに批判的なメディア」の2つに大きく分かれていた。

 日本はどこも同じように報道する。ニュースは横並びで、どれも同じように見える。フェイクが多いからと、途中でトランプ氏の会見の中継を打ち切る米国メディアとは、全く違う報じ方だ。

 メディアを見ていると分からなくなる。どれが事実なのか。どれが人々の意見なのか。トランプ支持者は、「今回の選挙を不正選挙であり、メディアは嘘を流している」と思っているなど、米国内は事実の一致点がおびやかされているのではないかと感じた。重要なのは、事実の部分を明確にすること。そしてそれをどう解釈するか、どんな意見を持つのかは、人間の数だけ分かれていいと思う。

選挙当日、暴動や激しい抗議行動が起きるのではと不安視する店も。ショーウィンドーに板を張っていた
選挙当日、暴動や激しい抗議行動が起きるのではと不安視する店も。ショーウィンドーに板を張っていた
選挙当日、暴動や激しい抗議行動が起きるのではと不安視する店も。ショーウィンドーに板を張っていた

 日本でも「陰謀論」や「フェイクニュース」があたかも事実のように捉えられていることがある。これからの世界は、「情報戦」であることを再認識した。メディアは、ファクトチェックに力を入れなければならないのだ。そして私たちは、莫大な情報の中から、真実を見抜く力を備える必要がある。

 日本でもそうだろう。公文書の改ざんや破棄など信じがたい出来事が起きる。透明性を上げて、事実は事実として捉えるべきだ。それが今の日本は揺らいでしまっている。