時事問題は、私たちの仕事や生活とどんな関係があるのでしょうか。経済ジャーナリストで作家の渋谷和宏さんが、一見私たちと関係がなさそうに見える問題を「自分ゴト」として引き寄せ、分かりやすく解説していきます。日経doors世代のみなさんが、それらの問題の解決を目指して行動するとき、日本が、世界が変わるのです! 連載第1回は、観光立国を目指す日本が今向き合う切実な課題「オーバーツーリズム」です。

 2019年秋にはラグビー・ワールドカップが、2020年夏には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、昨年3000万人を超えた訪日外国人旅行者はいっそう増える見込みです。経済には間違いなくプラスですし、日本に好意と興味を持って訪れてくれる外国人が増えるのはうれしいことです。しかし外国人旅行者の急激な増加は一方で京都など人気の観光地を中心に「オーバーツーリズム」の問題を引き起こしています。

 「日本を訪れた外国人旅行者の中には、傷ついて帰路につく人たちが決して少なくないんです。乗り物に乗っても、街を歩いても、お店に入っても、『あれをしては駄目』『これをしても駄目』とアナウンスや貼り紙・看板に注意され、まるで怒られているかのような気持ちにさせられてしまう。日本の習慣や常識にそぐわないことをしてしまって周囲の日本人からにらまれたり白い目で見られたりすることも多々ある」

 「日本に好意を持ってやってきた外国の人たちが、そんな嫌な体験を引きずったまま帰っていくのは悲しいですよね。日本の観光地でオーバーツーリズムが目立ち始めた今、そうした外国人旅行者はさらに増えていると思います」

 そう語るのは、ブランド戦略を手掛ける著名経営コンサルタントの村尾隆介さん(スターブランド共同経営者・フロントマン)。「希望郷いわて文化大使」も務めています。

ブランド戦略を手がける村尾隆介さんと「オーバーツーリズム」について話し合いました

 村尾さんは2016年、岩手県(盛岡広域振興局)が開いた「外国人おもてなしまとめサイト『いわての10手』」(現在は「いわての10手」)を監修。外国人旅行者向けにサービスの案内や、温泉マナーとその楽しみ方など示したピクトグラム(絵文字)をホームページで公開しています。

 今年9月と10月に釜石市の釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアムでラグビー・ワールドカップ(W杯)の2試合が行われることを踏まえて、2018年末に、W杯版のピクトグラムを実行委員会とともに新たに作成しました。

 「ピクトグラムは国境を越えるグローバルなコミュニケーション手段です。見て楽しい絵と『それをするな』ではなく『これをしましょう』という前向きなメッセージによって、外国人旅行者の日本での観光体験を支援し、ひいては日本のファンを増やしたい」

スターブランド共同経営者の村尾隆介(むらお りゅうすけ)さん。中小企業のブランド戦略や自治体ブランディングの仕事を多く手掛ける。東日本大震災の復興活動をきっかけに岩手県にかかわるようになる。希望郷いわて文化大使、いわて・かまいしラグビー応援団公式アドバイザー。講演は年間100本以上こなす。スポーツをこよなく愛し、19年5月にも東京から釜石市まで自転車とランニングで走破。『安売りしない会社はどこで努力しているか?』など著書多数