2013年4月の交渉開始から6年余りを経て、日欧経済連携協定(EPA)が19年2月1日に発効しました。日本が欧州連合(EU)から輸入する商品の約94%、EUが日本から輸入する商品の約99%の品目での関税撤廃などが実現します。と聞いても、あまりピンと来ないかもしれません。しかし日欧EPAは実は私たちに大きな影響をもたらします。生活に潤いを、企業にビジネスチャンスをもたらすだけでなく、仕事のやりがいさえも高めてくれる可能性があるのです。

明治屋で欧州ワインの輸入を担当する西方由香さん(右)と。若い女性にお薦めのワインとして西方さんが持っているのはフランス産「Kiwi Cuvee Chardonnay(キウイ・キュヴェ シャルドネ)」(1400円、税別)

 「今回のことを追い風にして、これまで扱っていなかったヨーロッパ産の直輸入ワインをスポット(単発の契約)で輸入したり、新たな仕入れルートを開拓したりと、いろんな取り組みを続けていきたいと思っています。価格についても、ただ一律に値下げするのではなく、全体のバランスを踏まえながら思い入れのあるワインを思い切って値下げするなど、メリハリを意識しています」

 明治屋でヨーロッパ産ワインの輸入を担当する西方(にしかた)由香さん(商品事業本部 酒類事業部 マーケティング部課長補佐)はそう語ります。

 西方さんが言う「今回のこと」とは、日本とEUの間で結んだ経済連携協定(以下、日欧EPA)です。今年2月1日に日欧EPAが発効、つまり協定がお互いの国・地域で効力を発揮して以降、西方さんの仕事には変化が生じています。

 というのも、日欧EPAの発効によって、これまでフランスやイタリア、スペインなど欧州産のワインには15%または1リットルあたり125円の関税がかかっていたのが、2月1日時点でそれが即時撤廃つまりゼロになったからです。

 関税とは海外から商品を輸入するとき、国が国内の競合品を保護するなどの目的で課している税金で、小売りや卸などの輸入業者が国に支払います。関税が下がればその分、小売りや卸のコスト負担が減るので、値下げなど値付けの自由度が増します。

 「この夏はスパークリングワインにもさらに力を入れていきたいと思います。特にお客さまにお薦めしたいのがスペイン産のスパークリングワインですね。もともと値ごろ感があった上に、1瓶(750ml)136円かかっていた関税がゼロになり、さらに安価になりました。スパークリングワインと言うと高級なシャンパンのイメージから、ハレの日のお酒だと受け止めている人が少なくありません。普段の食卓にも載せていただけるようにしたいですね」(西方さん)

明治屋広尾ストアーのワイン売り場。欧州産ワインがずらりと並ぶ。今回の日欧EPAを受け、ここ広尾ストアーでは欧州産ワイン約90品目の価格を改定した

身近な食品や衣類が値下げで大きな恩恵

 EPAあるいは自由貿易協定(FTA)という言葉をニュースで接することが最近増えました。

 どちらも何やら難しげですが、要は特定の国・地域との間で「貿易や投資など経済の結びつきをよりいっそう強めていきましょう」と約束する協定です。

 後者のFTAは関税をゼロにするなどして、モノの自由な貿易を目指します。一方、前者のEPAはモノの自由な貿易に加えて、外国人労働者を仕事に就きやすくしたり、海外からの投資への制限を緩和したりするなど、人やお金の移動についての自由化も目指します。さらに知的財産権の保護や紛争処理についてのルールづくりも協定の対象となります。EPAはFTAを包含し、より広範な自由化を目指す取り決めだと言えるでしょう。

 日欧EPAももちろんEPAの1つです。2013年4月に交渉を始め、日本がEUから輸入する商品の約94%、EUが日本から輸入する商品の約99%の品目での関税撤廃や、投資、電子商取引などのルールづくりについて合意し、先に触れたように今年2月1日に発効しました。日本とEUを合わせて世界のGDP(国内総生産)の27.8%、世界の貿易の36.9%を占める、大きな自由経済圏が誕生したのです(数字は2017年のもの)。

 とはいえ、これだけ聞いても、あまり身近に感じられないかもしれませんね。

 西方さんの仕事にも影響しているように、日欧EPAは実は私たちにも大きな影響を及ぼします。