「弊社には以前から環境・ゴミ問題に対して何かできることをしようという考えがあり、省エネや節水活動などに取り組んできました。プラスチック製ストローの廃止はその延長上にありました。さらに『地域社会に優しいことは積極的にやろう』という弊社の企業文化も大きいと思います。今回も、ストローの廃止がお客さまの増減にどれだけ影響するのか、小さなお子さまのようにグラスを持てずストローが必要なお客さまや、タピオカドリンクを飲まれるお客さまにはトウモロコシ由来の生分解性(注:微生物などによって分解され、最終的には水と二酸化炭素に分解されるプラスチック)ストローを提供しているのですが、コスト試算ありきではなく、お客さまへご不便をおかけしない形で『とにかくやってみよう』という判断でした」

 「ただ、お客さまからの反響については不安もありました。『どうしてストローを廃止したんだ!?』という否定的なご意見も覚悟したんです。結果は『賛同する』『応援する』という声が少なくありませんでした。環境保護へのご協力をお願いするお知らせを各テーブルに置いたこともあって、私たちの真意を理解していただけたのだと思います。これがきっかけになって環境・ゴミ問題への対応が外食業界、産業界に広がり、廃プラスチックによる海洋汚染への対策の一助になってほしいですね」

植物由来のストロー。小さなお子様やご年配の方などストローを必要とされる人向けには、植物由来のストローを用意しています。プラ製ストローを廃止するまでは、年間1億500万本を消費していました。それが現在は10分の1以下までに減ったそうです
植物由来のストロー。小さなお子様やご年配の方などストローを必要とされる人向けには、植物由来のストローを用意しています。プラ製ストローを廃止するまでは、年間1億500万本を消費していました。それが現在は10分の1以下までに減ったそうです

極小のプラスチックごみ5兆個以上が海に漂う

 すかいらーくの取り組みが示しているように、企業は今、脱プラスチックという重い課題に直面しています。「廃プラスチックが海に流れ、生態系に悪影響を及ぼしている」──研究者や環境保護団体が過去数十年にわたって警鐘を鳴らしてきた問題が、今や一般の消費者や投資家にも広く知られるようになったからです。

 廃プラスチックによる海洋汚染が注目されるきっかけは1本の動画でした。2015年8月、南米のコスタリカでウミガメの調査をしていた研究者チームは、何かが鼻に刺さり苦しんでいるウミガメを救助しました。鼻から出てきたのはプラスチック製ストローでした。この動画がツイッターなどのSNSで世界中に拡散した結果、廃プラスチックの問題が各国のメディアで盛んに取り上げられるようになったのです。

 さらに「廃プラスチックが海に流れ、紫外線や波で劣化して細かく砕けた粒(マイクロプラスチック)となって生態系に悪影響を与えている」との調査結果も世界中で報じられるようになりました。それらの中には、「マイクロプラスチックは北極海や南極でも発見されており世界全体で5兆個以上が漂っている」との衝撃的な推計もあります(プラスチックによる海洋汚染の調査・啓蒙活動を行うアメリカのNPO「ファイブ・ジャイルズ・インスティチュート」などの研究チームによる調査)。