ESG投資に重み ゴミ問題に鈍感ではいられない

 こうした情報・報道に接して、まず欧米の市民、消費者の間でプラスチック廃止を訴える世論が盛り上がっていきました。それに呼応して欧米の機関投資家も、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮する企業を選別し、投資する「ESG投資」をいっそう重視するようになりました。

 これらの動きは昨年、ついに欧米の政府や大企業を動かします。昨年1月、EU(欧州連合)の執行機関である欧州委員会は、「欧州で使用するすべてのプラスチック製容器や包装を、2030年までに繰り返し使えるか、リサイクルが可能な素材に置き換える」との目標を打ち出しました。さらに昨年5月、欧州議会がストローやトレーなど使い捨てのプラスチック製品の販売を2021年から順次禁止する法案を提案し、昨年10月に可決されました。企業も米スターバックスがプラスチック製のストローの使用を2020年までに全世界で廃止すると発表したり、米マクドナルドが英国とアイルランドで昨年9月からストローを紙製に切り替え始めたりしています。

 これらの動きに対して日本企業も無関係ではいられません。企業の振る舞いはネットを通して瞬く間に世界中に知れ渡ります。環境・ゴミ問題に鈍感な企業は、ESG投資を重視する欧米の機関投資家から無視され、最悪の場合、国際世論の批判にさらされかねません。日本企業として廃プラスチックによる海洋汚染にどう対処するのか? この課題にいち早く立ち向かったのが、すかいらーくだったのです。

「環境・ゴミ問題に鈍感な企業は、ESG投資を重視する欧米の機関投資家から無視され、最悪の場合、国際世論の批判にさらされかねません」(渋谷)
「環境・ゴミ問題に鈍感な企業は、ESG投資を重視する欧米の機関投資家から無視され、最悪の場合、国際世論の批判にさらされかねません」(渋谷)

居酒屋、ホテル…日本企業、続々と脱プラスチック

 そして今(2019年9月現在)、すかいらーくの取り組みが呼び水となって、遅れていた日本企業も動き出しました。居酒屋大手のワタミは今年6月下旬から居酒屋の「和民」「坐・和民」の約60店でプラスチック製ストローの提供を取りやめ、竹の食物繊維を使用する竹ストローに変更しました。竹ストローは間伐材として伐採した天然の竹のみを使い、燃やしてもダイオキシンなどの有害物質を発生しないと言われています。カフェチェーンの「タリーズ」を展開するタリーズコーヒージャパンも今年7月からプラスチックのストローを生分解性プラスチックのストローに順次切り替えています。

 脱プラスチックは外食だけではなく、ホテル・観光業界でも始まりました。藤田観光は今年7月末までに、ワシントンホテルや椿山荘など、運営するほぼすべてのホテルやレストランでプラスチック製ストローの使用をやめ、生分解性プラスチックと紙製のストローに切り替えました。星野リゾートも今年中に運営するすべての施設で、シャンプーやボディーソープなどの容器を個別の包装から繰り返し使用できるポンプボトルに切り替える方針です。星野リゾートはこれにより年間約49トン分のプラスチック容器の廃棄を減らせると試算します。