すかいらーくホールディングスは2019年7月までにガストやジョナサンなど国内外の全店舗でプラスチック製ストローを廃止しました。大手のファミレスチェーンでは初めての取り組みです。背景にあるのは脱プラスチックという企業が直面する重い課題です。廃プラスチック(プラスチックごみ)による海洋汚染の実態は、今や一般の消費者や投資家など広く知られるようになりました。脱プラスチックは企業、そして私たちの仕事や生活をどう変えるのでしょうか。

すかいらーくでマーケティングとITを担当する和田千弘さん(左)と
すかいらーくでマーケティングとITを担当する和田千弘さん(左)と

 「深刻化する環境・ゴミ問題をどう受け止め、それにどう対処しようとしているのか、具体的な取り組みを通して、すかいらーくとしてのメッセージを発信すべきだと考えていました。そのためにはお客さまと接点を持てる店舗で行うのがいいだろうとも。そこで2018年7月、弊社の社外取締役から社内取締役(取締役常務執行役員)に就任後すぐに『今回の取り組み』について取締役会で提案しました。異論はありませんでしたね。迷いやためらいの声さえありませんでした。翌月の8月中旬の午前中に開かれた取締役会で全員の賛同を得られて、その日の午後、発表しました」

 すかいらーくホールディングスで取締役常務執行役員CMO兼CTOを務める和田千弘さんはこう語ります。

 和田さんが言う「今回の取り組み」とは、使い捨てのプラスチック製ストローの廃止です。すかいらーくは2018年8月、他社に先駆けて「ファミリーレストランのガスト1367店で、ドリンクバーに置いてあるプラスチック製ストローを12月までに廃止する」「2020年までにジョナサンやバーミヤンなど全店舗約3200店に拡大する」と発表しました。これに合わせて谷真会長兼社長が「廃プラスチックによる海洋汚染は世界的に深刻になっており、いち早く対応することが企業の責任だ」と声明を出しています。

 そして、その言葉通り、2018年12月までにガスト全店でプラスチック製ストローを撤去しました。大手のファミレスチェーンでは初めてのことです。さらに今年6月までにジョナサンやバーミヤンなど13チェーン(ブランド)でもプラスチック製ストローを廃止し、7月には国内外の全店舗にまで拡大しています。

すかいらーく取締役常務執行役員CMO兼CTOの和田千弘(わだ ゆきひろ)さん。1992年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。大蔵省大臣官房調査企画課やマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社を経てアルペン取締役企画本部長、カートサーモン日本代表マネージングパートナー、インターブランドジャパン代表取締役社長CEO、グーグル日本法人事業戦略部門長兼分析統括責任者、シャディ代表取締役社長兼CEOを務める。2016年にすかいらーく社外取締役に就任、2018年7月より取締役常務執行役員としてマーケティング本部を担当し、12月より現職
すかいらーく取締役常務執行役員CMO兼CTOの和田千弘(わだ ゆきひろ)さん。1992年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。大蔵省大臣官房調査企画課やマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社を経てアルペン取締役企画本部長、カートサーモン日本代表マネージングパートナー、インターブランドジャパン代表取締役社長CEO、グーグル日本法人事業戦略部門長兼分析統括責任者、シャディ代表取締役社長兼CEOを務める。2016年にすかいらーく社外取締役に就任、2018年7月より取締役常務執行役員としてマーケティング本部を担当し、12月より現職

 横並びの意識がいまだに残る外食業界の中で、すかいらーくはなぜ先頭に立ってプラスチック製ストローの撤去に踏み切れたのでしょうか。和田さんは続けます。