念願のM&A案件を担当…そこで抱えた「さみしさ」とは

 西村あさひ法律事務所に入所後は、M&Aを担当する部署に配属された岡本さん。大手の法律事務所を選んだのは、「組織が大きければ扱う案件の数も多いし、システムや人材育成の環境が整っていると思ったから」だという。「実際、入所してからは優秀な先輩方に囲まれ、さまざまな経験を積むことができました」

 しかし、数年たった頃、岡本さんは「さみしさ」を感じるようになったと語る。

 「当時は、クライアントとの接点が限られていたので、距離が遠いと感じることがありました。というのも、M&Aの際に法律事務所に依頼がくるのは、クライアントが買収対象の企業を決定してからのことが多いんです。

 クライアントから依頼のあった買収対象企業を調査し、契約書を作成してクロージングするまでの業務を担当するので、『なぜその企業を買収するのか』『買収後に事業がどれくらい成長したのか』など、M&Aの全体像を把握することができなくて。

 外部のアドバイザーとして、M&Aの一場面に関わっているという形だったので、『自分はあくまでもサポート役。当事者ではない』という感覚があり、そのことにさみしさを感じるようになりました」

実際に仕事をするようになり、クライアントとの接点が限られていることに「さみしさ」を感じた岡本さん
実際に仕事をするようになり、クライアントとの接点が限られていることに「さみしさ」を感じた岡本さん

 こうした思いを抱きつつ、岡本さんは2013年の夏に、事務所の制度を利用して米国スタンフォード大学のロースクールに留学した。

 「仕事で海外企業と関わることもありましたが、私自身は海外に住んだ経験がなかったので、せっかく留学制度があるならそれを利用させていただき、自分が弁護士として国際的にやっていけそうかも探ってみたいと思いました」

 そしてこの留学が、岡本さんの働く意識を変えることになる。