とにかく「○○って」事業を立ち上げ

 一方、コンセプトやデザインが固まっても、服を作って市場に流通させるためには、デザインを形にしていかなければならない。アパレル経験がなく、服作りのプロセスも分からない状態から、どうやって服作りを進めていったのだろうか。

 「一言で言うと、めちゃくちゃ『ググりました』(笑)。例えば、『服 作り方 アパレル』といったキーワードを入れてネット検索をすると、『まずは服のサンプルを作る必要がある』といったことが分かります。すると、次は『どうやって工場に依頼してサンプルを作るんだろう?』という疑問が湧いてくるので、それをまたググるということを繰り返しました」

 田中さんは、知りたい情報を深掘りしながら検索し、得た情報を基に即行動。1つ1つ地道に疑問を解決していくことで、経験ゼロから服作りを進めていった。

 「最初は日本の工場にも問い合わせをしましたが、それだと販売価格が3万円くらいになる見積もりになりました。創業時は自分が学生だったこともあり、単価1万円以上の服にはなかなか手が出せなかったですし、学生である自分たちにも手が届く価格帯にしたいというこだわりがあったので、服作りは海外の工場に依頼することに決めました」

 海外にコネクションがあったわけではないので、工場は、日本にいながら海外の取引先を探せる『Alibaba』(アリババ)というBtoBプラットフォームを利用して決定。英語は少々話すことができたものの、ビジネス英語が使いこなせていたわけではなかったので、このときもGoogle翻訳をフル活用して、英語で海外の工場と商談をしていたという。

 「サンプルは5社くらいに依頼したのですが、指示を無視した仕上がりになっているものがほとんどで。最終的には、クオリティーの高いものに仕上げてくれた1社に依頼することにしました。工場の担当者とは、デザインでこだわっている部分を絵で描いて説明したり、音声通話ができるSkypeを利用してコミュニケーションを取ったりしたのですが、途中でスタッフの方が変わってゼロから説明する事態になるなどのハプニングもあり、動揺することは多かったですね(笑)」

 デザインの仕上がりにこだわるだけでなく、小柄女性にとって大切な服のサイズについても、サンプルが上がってきたタイミングでさまざまな身長の小柄女性に試着してもらい、一番いいサイズを模索して商品を仕上げていったという。

分からないことは、とにかく「ググった」という田中さん。当時を振り返り、「すべてが手探りで、動揺することも多かった」と語る
分からないことは、とにかく「ググった」という田中さん。当時を振り返り、「すべてが手探りで、動揺することも多かった」と語る

 一方、商品を販売するECサイトは、ゼロからシステムを構築しなくても、本格的なオンラインショップを開設できるプラットフォームを利用。そしてブランドの立ち上げを決めてからおよそ3カ月後の2017年11月にはサイトをプレオープンし、翌2018年1月に正式オープンを果たした。

 しかし、スピード感を持って事業を立ち上げる一方で、田中さんはもう一つの大きな決断をしていた。「大学卒業後の2018年4月からは、コヒナの運営を続けながら、新卒でグーグルに入社することを決めました」

 なぜ、二足のわらじを履くことにしたのか。その決断の理由は下編で。

取材・文/青野梢(日経xwoman doors) 写真/稲垣純也