社会人歴10年、それなのに何もできない自分を知った

 帰国後は、花に関する仕事をするために、本やネットでフラワーショップの情報を収集。実際に店舗を回る中で、東京・目黒区の自由が丘にあるフラワーショップ「ブリキのジョーロ」を訪れたときに、「ここで働きたい!」と思ったのだという。

 その直感に従って、前田さんはすぐにコンビニで履歴書を購入。駅前の証明写真機で顔写真を撮影し、面接を受けて同店で働くことが決まった。しかし、最初はできないことばかりで、注意を受けることも多々あったという。

 「社会人を10年やって、いろいろなことができるつもりになっていましたが、実際に花の仕事をしてみると、できないことだらけでした。請求書や領収書の発行の仕方もあやふやで、発送する商品の梱包もうまくできない。アナウンサーという肩書きを取ったら、何のスキルもない自分に驚きました

 けれど前田さんは、不思議と落ち込むことはなかったという。「できないことが多いということは、学べる余地があるということ。『人生まだまだこれからだ!』と思えて、新しい知識を吸収することを楽しめたんです。それは、花や緑が本当に好きだという、ブレない思いがあったからかもしれません」

 そうして2016年までの3年間、前田さんはブリキのジョーロで花の修業を積んだ。

何もできない自分を認め、学ぶことを楽しめるようになった